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コラム石垣 2017年12月1日号 神田玲子

「中心」から離れた「周辺」から変革が始まる。概して、「中心」と比べて「周辺」にはネガティブな印象が付きまとう。しかし、周辺であることで、かえって、プラスの結果となることも多い。中心からの影響をそれほど強く受けない地域には、独自の動きが生まれる可能性があるようだ。

▼例えば、米国西海岸のシリコンバレー。100年ほど前までは牧草地帯であったこの地は、米国の中心、東海岸のニューヨークからみれば遠く離れた場所であった。しかし今では、世界をリードするイノベーション企業が集結する地に変貌を遂げた。中心である東海岸が伝統的であるのに対して、西海岸は周辺であることで自由な気風を生んだ。また、フランスとスペインの国境に接しているバスク地方。パリとマドリードの二つの中心都市の影響をほどよく受け、世界的にも美食のまちとして知られる。これらの地域の優位性は、強い独立心にも表れている。世界的にも、バスク地方の独立運動は知られているし、カリフォルニア州が、トランプ政権の政策に異論を唱え、独立するという話も冗談半分で聞かれる。

▼中心から離れているが故に自立心が強くなることに対して、日本政府が取り組んでいる地方創生は、地域から東京に流れ込む人口をせき止めるために、中央から地域への影響力を強めようとするものだ。地域が何から何まで政府に頼ることになれば、地方創生は失敗に終わるだろう。自由で自立心にあふれた周辺だからこそ活性化することができる。地域の自立心を育てるために、中央政府が手を引くことから生まれる空白が必要だという考え方があってもよい。そこから湧き起こる力こそ地域にとって、真の発展の原動力となる。

(神田玲子・NIRA総合研究開発機構理事)

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