コラム石垣 2017年8月11日号 神田玲子

将棋界の15歳の藤井聡太氏が、プロ入り初の挑戦で連勝記録を塗り替えたことが大きな話題になった。初々しい若者が、駒を粛々と動かす姿に将棋ファンならずともくぎ付けとなった。その完璧ともいえる強さの背景には、人工知能(AI)ソフトを練習に取り入れていることがあるといわれる。AI特有の指し手を習得しているようだ。

▼将棋のソフトである「ポナンザ」を開発したことで有名な山本一成氏は、その著書の中で、なぜ、ポナンザがそこまで強くなったのか、自分でも分からないと述べている。プロ棋士の棋譜を覚えた程度のAIでは人間と対戦して負けることもあるが、AI同士が対戦を積み重ねることで強くなっていく。AIは24時間休みなく戦い続けることができるため、その対局数は人間の限界をはるかに超える。いつの間にか、人間のプロでは打つこともないような棋譜を打つようになるのだという。まさに、人類の枠を超えて、宇宙的な世界の話だというのもふに落ちる。

▼ソフト開発者がその能力を説明することができない意味で、AIはこれまでの技術とは性格を大きく異にする。これまでの技術は開発者であれば構造を熟知しており、何か事故が発生すれば解明することが可能であるものだ。これに対して、AIは完全にブラックボックス化してしまう。人間の人智を超えて自律的に進化している姿は不気味にも見える。

▼しかし、人々が熱中したのは、藤井氏の集中力と卓越した能力で勝ち進んでいる姿であり、その背後にあるAIではない。これはまさに、大きな目標に挑んでいる人間への賞賛である。人であることの価値を知り、人への共感を失わない限りは、AIの力を借りるのも悪くはない。

(神田玲子・NIRA総合研究開発機構理事)

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