中小にこそ必要
岡崎はものづくりのまちですが、製造業でも中小零細企業になると意外と「原価計算」が行えていません。きちんとしたコスト計算ができていないため、製造現場での原価の積み上げでなく、営業サイドで販売価格を決定しており、生産高・売上実績は伸びていても、利益が出ていない構造の企業をたくさん見てきました。また正確な数字を把握していないと、価格交渉の際にコスト以下に買いたたかれるケースも多いです。
会計士・税理士の先生は、会社全体の経営方針についてはチェックしてくれますが、個々の製品のコストと価格のバランスが適正かどうかまでは見てくれません。このため、従業員一人一人が基礎的な原価計算の知識を持ち、意識するだけで生産性は飛躍的に向上します。社長を含む従業員が原価計算の基礎知識を持っていることは、企業が成長する鍵になると感じています。
「どこを改善したら業績が良くなるのか。要因をひもとく」ためのツールとして会計知識は非常に有効です。価格交渉の際にも、製品ごとにデータを裏付けることで、対等に価格交渉が行えるという事例も少なからず見てきました。
また、会計知識を持った従業員が増えれば「どこに重点を置けば利益が出るのか」という経営への関心も向きやすいですね。
私の経験によると、製造工程を数値化できている企業は経営がうまくいっていると感じます。しかし、経営者は細かいところまでなかなか目が行きません。そこで、従業員に「原価計算に基づくデータを正確に把握する能力」があればそういった気付きが生まれ、経営改善につながります。
商工会議所では簿記検定試験を実施していますが、基礎的な原価計算についても広く学べる仕組みを提供できればいいと思いますね。
財務諸表は現場の裏付け
岡崎信用金庫に入庫後、財務諸表の読み方など、会計関係の勉強をはじめました。実際に現場に出てみると、中小企業の中には正確な財務諸表を作成できていない場合があるので、財務諸表を読み取る力だけでなく、現場の実態と合っているかを感じ取る力が重要だと感じました。財務諸表と企業現場の状況とを結び付けるには経験が必要ですが正確な会計知識があれば、理解が早く近道だと思いますね。財務諸表は現場の状況を裏付けるための大切なツールです。
また、単年度事業だけでなく、複数年度にまたがる事業も多いので、損益計算書・貸借対照表を数年単位で見る力が求められます。そして何より大切なのは経営者本人と会って話をすることです。今でも信用金庫の職員には「財務諸表と当該企業の実態との温度差を感じられるくらい現場に行きなさい」と指導しています。
外からエネルギーを
私が会頭に就任してから、商工会議所は会員企業へのメリットを還元できるよう、企業支援を中心とした業務にさらに力を入れて取り組むよう指示しています。今後は一過性のイベントだけではなく、長期的に「岡崎に住みたい」と思う人が増える魅力的な事業を実施していきます。
また、岡崎だけで完結するのではなく、商工会議所のネットワークを生かした広域的な連携を強化し、外からのエネルギーを入れることも推進していきます。他の地域からのエネルギーは地元に新しいものをもたらすので、今後も商工会議所の職員には積極的な外部との交流を促していきたいです。
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