わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、価格交渉力の強化に向けて、どのような取引行為が親事業者の法令違反に該当する恐れがあるのかなどについて解説します。今回は「合理的な理由のない指値発注」ついてご紹介します。
合理的な理由のない指値発注を受けた場合の対応は?
合理的な説明をせずに、通常支払われる対価に比べ著しく低い取引価格を不当に定めることは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)や独占禁止法に違反する恐れがあります。
【チェックポイント】
□発注者の事情のみをもって指値発注を要請されていませんか。
□受注者が円高や不況時などの一時的な事情に対応し単価引き下げに協力した後、状況が改善したにもかかわらず単価が据え置かれていませんか。
□単価が曖昧なまま発注され、製品納入後、見積価格を大幅に下回る取引価格が定められていませんか。
□厳しい短納期で発注され、受注者に発生する費用増を考慮せずに取引価格が定められていませんか。
□給付の内容に知的財産権が含まれているにもかかわらず、当該知的財産の対価を考慮されずに取引価格が定められていませんか。
【相談事例】
Q.取引先から鉄塔の看板などのデザインの制作を委託されています。取引先は15年前に他の事業者に対し同様のデザイン業務を発注した際は、価格を十分に協議することなく一方的に指定するいわゆる指値により、通常の対価を大幅に下回る額を定めました。どのように取引先と交渉をしたらよいでしょうか。
A.取引先の事情のみをもって指値的に発注するなど、取引価格を不当に定めることは「買いたたき」の恐れがありますので、合理的な根拠を基に取引価格を設定してもらうことが重要です。留意すべき点は、①見積価格の前提となる発注数量を明確にし、発注数量が一定水準以上変動した場合は、単価を再設定する旨を見積書に記載すること、②発注ロット数に応じた単価で見積りを取得し、見積り時の段階で発注ロット数ごとの価格を取り決めること、③合意に際しては、「日時」「場所」「担当者(自社・取引先双方)」「方法(対面・電話など)」や交渉経緯などを書面(議事録など)に残すこと、です。
提供
公益財団法人 全国中小企業振興機関協会
下請取引適正化の推進を目的に、全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」を中小企業庁の委託により運営するなど、中小企業支援機関として各種事業を実施しています。http://www.zenkyo.or.jp
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