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骨太の方針を閣議決定 財政健全化が不可欠

人材投資、研究開発投資に重点

政府は6月9日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2017」を閣議決定した。骨太の方針では、持続的な成長の基盤となる人材投資や研究開発投資の強化に重点が置かれるとともに、社会保障の効率化に向けた方向性が強く打ち出された。また、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を堅持することも示された。日本商工会議所の三村明夫会頭は同日発表したコメントで「労働市場をはじめ、一段の規制緩和を含む環境整備に努めていただきたい」と述べ、政府に対し確実な政策実行を求めた。骨太の方針の概要は次の通り。

第1章 現下の日本経済の課題と考え方

1.日本経済の現状と課題

⑴わが国経済の現状と一億総活躍社会の実現に向けた政府の取り組み

(略)

⑵働き方改革による成長と分配の好循環の実現

(略)

⑶人材への投資による生産性の向上

(略)

⑷地方創生

(略)

⑸消費と民間投資の喚起

(略)

2.東日本大震災などからの復興

⑴東日本大震災からの復興・創生

(略)

⑵熊本地震への対応

(略)

第2章 成長と分配の好循環の拡大と中長期の発展に向けた重点課題

1.働き方改革と人材投資を通じた生涯現役社会の実現

⑴働き方改革

・「働き方改革実行計画」に忠実に従って働き方改革を推進する。

・同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善を図る。

・36協定でも超えることのできない罰則付きの時間外労働の限度を定める。

・テレワークのガイドラインを改定する。

・労働者の健康確保に配慮しつつ、副業・兼業の普及・促進を図る。

・治療と仕事の両立に向け、トライアングル型のサポート体制を構築する。障がい者就労の促進のため、在宅就業の支援などに取り組む。

・高度外国人材をさらに受け入れるため、就労環境・生活環境の整備やマッチング支援などを進める。

・雇用吸収力の高い産業への転職・再就職を支援する。

・若者の活躍、高齢者の就業促進に向けた環境整備を行う。

⑵人材投資・教育

・幼児教育・保育の早期無償化や待機児童の解消に向け、財政の効率化、税、新たな社会保険方式の活用を含め、安定的な財源確保の進め方を検討していく。

・年内に結論を得て、高等教育を含め、社会全体で人材投資を抜本強化するための改革の在り方についても、早急に検討を進める。

・適正な勤務時間管理や業務の効率化・精選、学校の指導・事務体制の強化・充実や勤務状況を踏まえた処遇の改善などを通じて、教員の長時間勤務状況を早急に是正し、年内に緊急対策を取りまとめる。

・大学教育の質の向上を図る。また、大学の組織再編を進めるための枠組みなどの整備に向けた検討を進める。

・離職した女性の復職および再就職や社会人の学び直しなどを支援するため、リカレント教育の充実を図る。

⑶少子化対策、子ども・子育て支援

・子育て安心プランに基づき、安定的な財源を確保しつつ、取り組みを推進する。

・妊娠期から子育て期まで切れ目のない子育て支援体制を拡充する。

⑷女性の活躍推進

・労働時間などの個別企業の情報が確実に公表されるための制度改正の検討など女性活躍情報の見える化の徹底と活用の促進、女性リーダーの育成、男性の暮らし方・意識の変革などを進める。

2.成長戦略の加速など

⑴ソサエティー5・0の実現を目指した取り組み

・健康寿命の延伸、移動革命の実現、サプライチェーンの次世代化、快適なインフラ・まちづくり、フィンテックの五つの戦略分野を中心に、政策資源を集中的に投入する。

・規制の「サンドボックス」制度の創設、データの利活用、人材投資と労働移動の円滑化、規制改革・行政手続き簡素化・IT化の一体的推進、イノベーション・ベンチャーのエコシステムの構築など、価値の源泉の創出に向けた共通基盤の強化に取り組む。

⑵生産性の向上に向けた施策

・労働生産性向上ノウハウを全国津々浦々の中小企業に展開する「生産性向上国民運動推進協議会」による国民運動を展開する。併せて、生産性向上に取り組む地域の中小企業、サービス業への支援を図る。

・コーポレート・ガバナンス改革を進め、企業の収益が研究開発投資、設備投資、人材投資に振り向けられるようにする。 

⑶投資の促進

・「科学技術イノベーション官民投資拡大推進費(仮称)」により、「官民研究開発投資拡大プログラム」を創設するための準備を着実に進める。「第5期科学技術基本計画」に基づき、官民を挙げて研究開発などを推進するとともに、基礎科学力および基盤技術の強化、オープンイノベーションの推進や機能強化を図る。政府研究開発投資について、対G DP比1%にすることを目指し所要の規模の予算が確保されるよう努める。 ・対日直接投資促進のため、外国企業などに対する規制・行政手続きの負担を軽減するとともに、JETRO(日本貿易振興機構)による外国語での情報発信、コンサルテーションを充実する。

⑷規制改革の推進

・「規制改革実施計画」の実施、国家戦略特区、行政手続きコスト削減に向けた取り組みを推進する。

⑸新たな有望成長市場の創出・拡大

・文化芸術立国・スポーツ立国に向けた各種政策、クリーンで魅力ある「日本型IR」(特定複合観光施設)の整備を推進する。

⑹海外の成長市場との連携強化

・環太平洋パートナーシップ(TPP)協定について、各国と緊密に連携し、早期実現を図る方策について主導的に議論を進める。日米首脳間の合意に基づき、日米経済対話を進める。日EU・EPAのできる限り早期の大枠合意を目指す。

・日本固有の魅力の創造・発信・展開などクールジャパン戦略を推進し、輸出・観光を促進する。

3.消費の活性化

⑴可処分所得の拡大

・過去最高の企業収益を継続的に賃金引き上げに確実につなげ、消費の拡大を図る。中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境を整備する。

⑵新しい需要の喚起

・健康・予防分野の需要喚起、観光・旅行消費の活性化、キッズウイークの設定、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会などの開催に向けた取り組み、プレミアムフライデーの利用促進、ストックの有効活用を図る。

4.地方創生、中堅・中小企業・小規模事業者支援

⑴地方創生

・地域人材への投資を通じた地域の生産性向上および東京一極集中の是正に取り組むなど、「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2016改訂版)」および「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」に基づき、地方創生の新たな展開などを図る。

⑵攻めの農林水産業の展開

・農業者の所得向上を図るため、農業者が自由に経営展開できる環境整備と農業者の努力で解決できない構造的な問題を解決する。

・生産資材価格の引き下げ、流通・加工の構造改革、GAP・HACCPの戦略的推進と食の安全確保などにより競争力強化をさらに加速させていく。

⑶中堅・中小企業・小規模事業者支援

・地域経済の主役である中堅・中小企業・小規模事業者が経営強化を図り、引き続き、地域経済をけん引していくため、きめ細かな取り組みを行う。

⑷地域の活性化

・地域経済循環を創造する事業や、地域の消費拡大などに向けたマイナンバーカードの活用などに取り組む。過疎・条件不利地域における定住環境整備や、集落の維持・活性化、移住・交流を推進する。広域的な高速交通ネットワークの早期整備・活用を通じた人流・物流の拡大を図る。対流促進型国土の形成を目指す国土形成計画などを推進する。

・沖縄の優位性と潜在力を生かし、日本のフロントランナーとして経済再生のけん引役となるよう、引き続き、国家戦略として、沖縄振興策を総合的・積極的に推進する。

・地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革を着実かつ強力に進める。改革の成果を国民が実感できるよう、優良事例の普及や情報発信の強化などに努める。

・大都市において、国際ビジネス・生活環境の整備や防災性の向上などを図るため、既存都市基盤を柔軟に整備

・活用しつつ、民間都市開発事業を推進する。

⑸国土強靱化・防災、成長力を強化する公的投資への重点化

・「国土強靱化基本計画」と「国土強靱化アクションプラン2017」の着実な推進、ICTの活用・研究・人材育成を含めた防災・減災、生産性向上に資するインフラの計画的整備などに取り組む。

5.安全で安心な暮らしと経済社会の基盤確保

⑴外交・安全保障

(略)

⑵治安、消費者行政

(略)

⑶共助・共生社会づくりに向けた取り組み

(略)

⑷資源・エネルギー

・あらゆる分野で省エネルギーを推進するとともに、再生可能エネルギーについて最大限の導入と国民負担抑制を両立する。水素社会実現に向けた取り組み、エネルギーの地産地消などを推進する。

・資源確保に向けて、権益獲得、アジアのLNG市場拡大、国内での資源開発、国内の石油・LPガスサプライチェーンの維持強化などに取り組む。

⑸地球環境への貢献

・パリ協定の下、温室効果ガスの世界全体の排出削減に最大限貢献し、わが国のさらなる経済成長につなげるよう、「地球温暖化対策計画」「気候変動の影響への適応計画」を推進する。

・循環共生型社会の構築に向けた取り組みを推進する。

⑹統計改革の推進

(略)

第3章 経済・財政一体改革の進捗・推進

1.経済・財政一体改革の着実な推進

・「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、引き続き、600兆円経済の実現と2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成という双方の実現を目指す。

・「経済・財政再生計画」の「集中改革期間」の最終年度である2018年度(平成30年度)においても、手綱を緩めることなく、同計画における歳出・歳入両面の取り組みを進める。

・人的資本の質を高め、潜在成長率を引き上げていく。このため、社会保障の持続可能性を高めるとともに、人材投資や研究開発投資などの強化を通じて、経済社会の生産性の引き上げを図る。

2.改革に向けた横断的事項

⑴「見える化」、先進および優良事例の全国展開、ワイズ・スペンディングの推進

(略)

⑵データプラットフォームの整備を通じたEBPMの推進

(略)

⑶将来見通しの策定、実行

(略)

3.主要分野ごとの改革の取り組み

⑴社会保障

・「経済・財政再生計画」に掲げられた44の改革項目について、改革工程表に沿って着実に改革を実行していく。

・地域医療構想の実現に向けて、地域ごとの「地域医療構想調整会議」で具体的議論を促進する。医療計画・介護保険事業計画の整合的な策定を進める。

(以下略)

⑵社会資本整備など

・コンパクト・プラス・ネットワークの推進に向けて、省庁横断的な支援の重点化を行うなどまちづくりと多様な分野との施策連携に取り組む。

・公的ストックの適正化、インフラ管理のスマート化に向けて、「見える化」や優良事例の全国展開を図る。

・所有者を特定することが困難な土地の適切な利用や管理が図られるよう、関係省庁が一体となって検討を行い、取り組みを進める。官民連携による空き家・空き地の流通・利活用などを進める。

・「未来投資戦略2017」および「PPP/PFI推進アクションプラン(平成29年改定版)」に基づき、コンセッション事業などをはじめ、多様なPPP/PFIの活用を重点的に推進する。

・戦略的な社会資本整備を進めるため、ストック効果の高い事業への一層の重点化を図りつつ、社会資本の投資効率を向上させる。

⑶地方行財政など

(略)

⑷文教・科学技術

・少子化の進展を踏まえた予算の効率化、民間資金の導入促進、予算の質の向上・重点化、エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底を基本方針として、各種改革を進める。

⑸歳入改革、資産・債務の圧縮

(略)

第4章 当面の経済財政運営と平成30年度予算編成に向けた考え方

1.経済の現状および今後の動向と当面の経済財政運営の考え方

・人材への投資による生産性の向上と、その成果の国民への還元を中心に据え、研究開発投資の促進および可処分所得の拡大、働き方改革、保育や介護の環境整備、貧しい家庭に生まれたとしても高等教育を受けることができる制度といった政策

・取り組みを進めていく。

・日本銀行には、経済および物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。

2.改革に向けた横断的事項

⑴「経済・財政再生計画」の着実な実行

・「経済・財政再生計画」「経済・財政再生アクション・プログラム」、改革工程表にのっとって、経済・財政一体改革を加速する。

・「経済・財政再生計画」で掲げた「財政健全化目標」の重要性に変わりはなく、基礎的財政収支を2020年度までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す。このため、「経済再生なくして財政健全化なし」との方針の下、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革という「三つの改革」を確実に進めていく必要がある。

⑵平成30年度予算編成の在り方

(略)