着物を通して「笑顔」をつくる
株式会社心結 代表取締役 越田 晴香(こしだ・はるか)
「着物でまち歩き」を提案 金沢の文化生かして
生まれ育った金沢で、平成22年に観光用の着物レンタル業を始めました。当時、27年の北陸新幹線開業を前に、観光客の増加を見込んでの起業でした。着物レンタル業を思い立ったのは、幼い頃から日本舞踊を習っていて着物が好きだったこともありますが、東京の機械系メーカーで営業をしていたとき、多くの女性が金沢に「和のまち」「着物が似合うまち」とのイメージを持ち、金沢や着物に憧れていると感じたことからです。その頃、京都では着物を借りてまち歩きを楽しめるサービスがありましたが、金沢にはそうしたサービスはありませんでした。和のまちのイメージがあるのに、なぜ金沢にはレンタル着物がないのだろう。需要はきっとあるはず。そう思い、創業を決意したのです。
幸い母や祖母の嫁入り時の着物がたくさんタンスに眠っていたため、当初はそれらの着物を活用。また、私は着付けができたので、お客さまの着付けも自分で対応しました。しかし着崩れしないよう着付けるには技術が要るため教室にも通い、大勢のお客さまに接する中で試行錯誤を繰り返しながら技術を磨きました。創業後5年間は、そうして手探りしながらスキルや知名度の向上につとめ、その甲斐あって北陸新幹線開業後は関東からのお客さまの倍増にもスムーズに対応し、基盤を固めました。
笑顔が生まれる事業へ
現在、当社は着物レンタルから着付け、ヘアセット・メイク、店内・観光地での写真撮影、香道・琴などの和文化体験やタクシー観光まで一括して対応しています。昨年は、「大正ロマンヘア」にアンティーク着物で美術館やカフェを巡るまち歩きプラン、お宮参りプランなどを開発しました。次は、石川県のマスコットキャラクター「ひゃくまんさん」や料亭とのコラボレーション、加賀友禅作家との新たな着物の開発などを検討中です。
着物を着ると女性は自然に笑顔になり、地元の人とのコミュニケーションも生まれます。私は、着物を通してお客さまはもちろんスタッフ、着物を作る人、地元石川県民も笑顔にしたい。地元には、着付けの技術や資格を持っていても眠らせている人や、出産を機にやめてしまった美容師が多くいます。そうした女性たちに声を掛け、スタッフを確保してきました。カメラマンもスタジオを持たないと仕事がなかったため、観光地で撮影する仕事をつくり、パートナー契約を結んで依頼しています。また、加賀友禅や能登上布といった石川県の伝統工芸作家とオリジナルの着物の開発も行っています。
30着の着物で始めた事業ですが、現在は100着に増え、背の高い外国人にも対応できるようになりました。客数の増加とともに従業員も増加。子育て中のママ、子育ての終わった女性などさまざまなライフステージの女性がスキルを生かして働いており、笑顔の絶えない場を創ってきました。これからも皆がイキイキと働けるよう、日々改善して進んでいきます。
会社データ
社名:株式会社心結(ここゆい)
所在地:石川県金沢市本町1-3-39
電話:076-221-7799
創業:平成22年
事業概要:着物レンタル、美容(ヘアセット・メイク)、撮影、和文化体験
※月刊石垣2018年5月号に掲載された記事です。
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