7月から始まった自民、公明両党の与党税制協議会による消費税の軽減税率導入に関する関係団体ヒアリングにおいて、小売団体などから導入に慎重な意見が相次いでいる。29日の同協議会で意見発表した日本商工会議所の田中特別顧問・税制委員長も中小企業への影響が大きいことなどから軽減税率に強く反対。両党に再考を求めている。
自公両党は軽減税率の導入で税率が複数になった場合の事業者の経理手法について、現行に近い簡易な方式から、商品ごとに税率や税額、事業者番号を細かく記載する欧州連合(EU)型のインボイス(税額票)まで4案を提示。7月に協議会を4回開き、約40の関係機関に意見を求めている。
同協議会のヒアリングで、日商の田中特別顧問は、商工会議所が複数税率に反対している理由として「社会保障制度の持続可能性」「対象品目の線引きが不明確」「過大な事務負担」の3点を強調。商工会議所として導入には絶対反対の立場を表明した。
社会保障財源の問題については、食料品に軽減税率を導入すると、1%あたり最大6600億円と大幅な社会保障財源が失わることから、「失われた財源を新たに確保するためには、社会保障給付の削減や、消費税の再引き上げが必要になる」ため、持続可能な社会保障制度構築に支障が出ると指摘。「複数税率は、高所得者ほど大きな恩恵を受ける。低所得者対策としては非効率」と述べ、「きめ細かな現金給付で対応した方が、より効果的であり、国民にも理解を得られる」との考えを表明した。
対象品目が不明確で、国民と事業者双方に大きな混乱を招く点にも危惧を表明。協議会が示す8種類の線引き案について、「いずれの場合も軽減税率の対象品目となるか線引きが不明確で、線引きによっては、類似の品目でありながら、公平な取扱いが困難となる」と指摘した。
協議会の示す4つの区分経理案については、「どの方式を採用しても現行に比べて大きく事務負担が増加するだけでなく、簡易課税制度を利用している20万を超える事業者が課税選択を強いられる」と強い懸念を表明。インボイスを導入すれば、BtoC取引の事業者も含め、免税事業者が取引から排除される点を強調した。
さらに、利用率が10%程度に過ぎない商品マスタ付POSや、税抜き経理に対応した経理システムの導入など、「大きなシステムの事務負担や費用負担が発生する」と警鐘を鳴らす。中小企業の記帳・経理事務の実態を丁寧に説明し、過大な事務負担が発生する複数税率導入には商工会議所としては容認できない立場を改めて示した。
日商では、7月16日に行われた夏季政策懇談会でも消費税率引き上げに伴う複数税率の導入阻止に向け、全国の商工会議所で一丸となって運動を展開していくことで一致。今後、年末に向けた政府税調、党税調の議論に中小企業の切実な声を届けるため、関係各方面に働きかけを強めていくことにしている。
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