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「ふるさと休日」創設を提言 経済財政諮問会議 休み方改革ワーキング・グループ報告書概要 (平成26年11月) 9~11月を重点期間に プラスワン・キャンペーン 有給休暇取得促進へ

国別の有給消化日数 ~日本:2020年までに年次有給取得率目標70%~

政府の経済財政諮問会議の専門調査部会として設置された「休み方改革に関するワーキング・グループ」(座長・高橋進日本総合研究所理事長)はこのほど、祭りなどに合わせて、地域ごとに「休日」を設ける「ふるさと休日」制度を創設することなどを盛り込んだ提言を取りまとめ、11月19日に開催された経済の好循環に向けた政労使会議で報告した。報告書では、ワーク・ライフ・バランスの推進、生産性向上などの観点から、働き方とともに休み方を見直すことの重要性を指摘するとともに、観光振興や地域活性化にもつなげていくための具体策などを提言。特集では、同ワーキング・グループの取りまとめた報告書のうち、企業における取り組みと提言部分の抜粋を紹介する。

11月19日の政労使会議で、安倍首相は、「1日8時間、週5日という従来の働き方に縛られず、個々の従業員の創造性発揮のためにも、さまざまな働き方があってしかるべき。創造性を発揮するためには、働き方も考えなければいけない」とコメント。「長時間労働を美徳とする文化は変革すべき。休み方については、ワーキング・グループの提言を踏まえて、意識改革を進めていきたい」との考えを示した。

休み方改革に関するワーキング・グループの報告書では、「日本の年次有給休暇取得率は、平成24年で47・1%と、平成17年の水準(47・1%)に低迷しているほか、取得日数に関しても、平成11年(9・0日)以降は、平成23年を除いて8日台(8・2日~8・9日)に低迷している」と指摘。労働時間についても、一般労働者の年間総実労働時間は2000時間前後で高止まりしていることなどに触れ、「休みに対する見方の転換」を強く求めている。

さらに、「長時間労働が当たり前という現状を変えなければならない」という強い危機意識を持つことの重要性を訴えるとともに、男性正社員の長時間労働と専業主婦を前提とした人口ボーナス期における発展モデルは成り立たなくなっていることから、「休み方・働き方を見直し、個々人が『稼ぎ』も『務め』も果たしつつ、自身の人生、社会全体を豊かにしていけるような社会を目指すべき」と指摘。「次世代のために、われわれの世代から変えていく。これは、われわれの世代だけの問題ではない」と強調している。

業種による課題抽出 企業における取り組み(抜粋)

1. 先進企業6社のヒアリング結果

企業の取り組み(先進企業からのヒアリング)

人口減少や高齢化の進行が見込まれる中、日本経済が長期的に安定した成長を実現していくためには労働生産性を高めることが必要である。そのためには、労働者一人ひとりが心身ともに充実した状態で、意欲と能力を存分に発揮できる環境を整備していくことが重要である。こうした観点から、先進的な取り組みを行う企業などから、日々の休み方・働き方についてヒアリングを行ったところ、以下の「企業の取り組み(先進企業からのヒアリング)」のような特徴が見られた。

2. 有給休暇取得が困難な業種における課題(宿泊業)

本ワーキングにおいては、先進的な取り組みなどの紹介のほか、有給休暇の取得が困難な業種の1つである宿泊業の状況について取り上げた。厚生労働省「就労条件総合調査」(平成24年)によると、宿泊業・飲食サービス業における年次有給休暇取得率は29・8%。宿泊業については、訪日外国人が増加し、宿泊客の増加が見込まれる一方、労働力需給がひっ迫する中にあって、若者を含めた人材を採用するのみならず、その定着・育成を推進することが大きな課題となっている。しかしながら、主に次のような要因から、有給休暇以前に休日が取られていないなど、従業員の休み方に経営の目が向けられにくいという特徴が指摘された。

・顧客をもてなす必要上、勤務時間が流動的になりやすい。

・商機を増やすため、できるだけ開館しておきたい。

・業態が多様化する中にあって、ビジネスモデルとして設備や価格などが優先され、十分な休暇取得も含め、人をしっかり育ててサービスの質を高めようという動機づけに至っていない。

また、以上の分析も踏まえ、他業界にも共通する課題として次の指摘があった。

➀社員の休日・有給休暇取得を前提とした経営・人員計画

休みが取れないところはそもそも全く休みを取らないことを前提として、ぎりぎりの人員配置にしている。よって、先ずは社員の休日の取得を前提として計画すべき。

➁経営目標としての有給休暇取得率向上、社員への積極的な働きかけ

労働力不足が各業界共有の課題となる中、業界のイメージを変え、若い人にとって魅力的な職場としてアピールする動機づけの一つとして、休み方を見直すことが考えられる。

➂既存の業界の枠組みを超えた競争の中で何を強みとするか企業によって競争の基準が異なる。すなわち、全ての企業がヒトを強みとしているわけではないことから、➁のような動機づけを含む人材への投資に目が向きにくい。

ライフスタイルの変革を 提言 (抜粋)

人口減少社会にあって日本人が豊かに生きていくためには、ライフスタイルの変革が必要であり、地域における交流は変革のための大きな刺激となる。また、変革を生み出すためには、先ず休むこと、すなわち、「有給休暇をしっかり取得すること」が必要不可欠な手段となるが、休み方の見直しは自ずとワークスタイルの変革につながる。

こうした変革のうねりを起こすために、地域・企業・個人が一丸となった取り組みが必要であるが、Ⅱ章(地域における取り組み)、Ⅲ章(企業における取り組み)からも明らかなように、こうした取り組みは、一朝一夕で実現するものではない。よって、変革の口火を切るための第一歩として、以下1~3の取り組みをしてはどうか。

また、休むことに対する後ろめたさを払しょくするためには、企業や国・地方自治体のトップが率先して休暇の取得を行うことが意識改革につながる。

例えば、「クールビズ」は、政治が率先して実践したことが大きな契機となって全国に普及した。以下の取り組みが、トップの実践を伴いつつ強力に推進されることが期待される。

1 地域の取り組み

地域ぐるみで休むためには、地域内での取り組みを地道かつ粘り強く推進する必要があるが、それぞれの地域内のみでいくら有給休暇取得促進に向けた取り組みを行っても、生活圏が拡大する中で、地域外に勤務先などがある場合に理解が得られにくい。

地域外の事業主などからすれば、(自分には縁もゆかりもない)祭りを理由に休むと告げられたところで、ただちに同意できない面があることも否定できない。

この点を乗り越えて取り組みを加速させるため、「特定の日に特定の地域が休む」ことについてよりコンセンサスを得やすい仕組みを構築してはどうか。

(1)地域ごとの「ふるさと休日」の設定

具体的には、日付が固定された伝統行事やイベントのある市町村(周辺地域を含む)を中心に、国・地方自治体・教育委員会・関係団体などが連携・調整し、「ふるさと休日」を設定することを推奨してはどうか。

その際、国が、各地域の「ふるさと休日」を集約したカレンダーを作って公にすることで、「カレンダーに記載された地域は、その日に当然に休んでいる」という雰囲気作りをサポートすることも考えられる。

(2)地域の外に暮らす人々も参加するための取り組み

また、地域の休日を活性化する観点から、地域の外に暮らす人々が有給休暇などを取得し、地域を訪れる機会を作ることも重要である。

こうした観点から、地域に暮らす人々のみならず、地域をふるさととする出身者のほか、リピーターや過去に暮らした経験のある人など、地域を「第2のふるさと」と考える者が、地域のお祭り、イベントなどに合わせて休暇を取得しやすい環境整備が重要となる。そのための企業の取り組みとして、「ふるさと休暇」などを通じ、地域のために休むことを奨励してはどうか。

一方、受け入れ側の取り組みとしては、地元の人々との交流の機会の提供や、例えば、登録した者が地域内で割安なサービスを受けられるなどのメリットを享受できる「第2の住民票」など、地域を訪れる者に魅力を提示することなども考えられる。

2 企業の取り組み(「プラスワン休暇キャンペーン」の実施)

上記の趣旨を踏まえつつ、有給休暇取得日数の増加を図るための取り組みの象徴的な第一歩として、以下の取り組みを推進してはどうか。もとより、個々人が柔軟に休むことが本来の趣旨であることに十分に配慮することとし、企業の業種・業態や規模により以下(1)(2)の有給休暇取得が困難な場合には秋以外での連続休暇取得や土日に合わせた有給休暇取得の取り組みを促す。

(1)有給休暇取得による4日以上の連休の実現

①全国一律に休日を増やすことではなく、個々人が有給休暇を活用することにより、4日以上の連休の実現を奨励する。

②そのため、各企業における労使一体での有給休暇取得向上のための取り組みを促す。とりわけ、有給休暇取得促進の取り組みが十分でない企業において重要である。

(2)秋の連休取得重点期間

有給休暇取得に対する意識改革の突破口とする期間として、3連休の多い9月~11月を連休取得重点期間として普及推進することとする。

(3)休み方・働き方改革に係る先進的な取り組みに関する情報発信

(1)の実効性を高めるため、行政と労使が連携しながら、先進的な取り組みを行う企業労使から働き方・休み方改革の好事例を収集し、他の企業トップや労使が関心を持ち、参考にしやすい形に整理した上で、効果的に発信する。

その際、対応が困難な者の底上げを念頭に、業種・業態別の課題や特性に応じた情報発信、中小企業向け情報発信にも留意する。さらに、先進的な取り組みを好事例として表彰することなどを通じて、企業の取り組みの活性化を促すことも考えられる。

3 個人の取り組み

ライフスタイルの変革などを実行する主体は、あくまで個人である。

職場・職場以外での自分のあり方、家族・地域とのつながりなども念頭に置きながら積極的に休みを取るという意識改革を行っていくことが重要であるが、その第一歩として、上記1、2の機会も活用しつつ、先ずは自分のために休んでみることが重要である。

4 個人・企業・地域の取り組みの発展的融合を目指して

「プラスワン休暇」が強力に推進されることで、地域の取り組みと発展的に融合し、意識改革された個々人が家族ぐるみで地域ごとの取り組みに参画することや、地域外に暮らす人々の参加も促すことを通じて、地域の活性化につながっていくことを目指すべきである。

中小企業の取り組みについて、例えば、直方商工会議所(福岡県)が「時間外労働削減、年次有給休暇取得促進の好事例集」を作成しているが、こうした取り組みを充実させていくことが考えられる。