訪ベトナム・ミャンマー経済ミッション ビジネス環境整備と人材育成で協力

記念品交換する三村団長(左)とフック首相

両国首脳、投資の拡大を期待

日本商工会議所は1月22日から28日まで、三村明夫会頭を団長とする経済ミッションを、昨年新指導部体制が発足し、一層の経済発展が期待されるベトナムとアウン・サン・スー・チー氏率いるNLD(国民民主連盟)による政権が誕生し、今後の経済運営が注目されるミャンマーの二カ国に派遣した。本ミッションでは、ベトナム・ミャンマー両国首脳と相次いで会談が実現。経済関係の強化、ビジネス・投資環境改善などを呼び掛けた。特集では、今回のミッションの概要と成果などを紹介する。

ベトナム フック首相 進出日本企業を最大限支援

最初の訪問国であるベトナムでは、グエン・スアン・フック首相、マイ・ティエン・ズン内閣官房長官、グエン・チー・ズン計画投資大臣など政府首脳とヴー・ティエン・ロックベトナム商工会議所会頭らと相次いで会談した。 フック首相との会談では、三村団長からのあいさつの後、団員から「橋梁などの社会インフラ整備」「発電所建設などのエネルギー事業」「国営繊維会社への投資」などの取り組みを紹介し、併せて「円借款案件のVAT(付加価値税)支払いの遅延解消」「インフラ整備に向けた資金借入に対する政府保証の継続」「日本へのベトナム人留学生、技能実習生と日系企業とのマッチング」などについて意見や質問が挙げられた。 フック首相からは「ベトナム人は日本人の誠実さ、勤勉さを高く評価し、日本はベストパートナーになると期待している」とした上で、ベトナム政府への意見・要望については、ベトナム商工会議所と連携、議論してぜひ伝えてほしいと述べた。 また、ベトナムに進出する日本企業を最大限支援すると強調。農業を含め投資の分野・形態も広がりつつあり、ビジネス環境の改善に力を入れるので、引き続き緊密な意見交換を望むと述べた。 フック首相との会談に先立ち行われたズン計画投資大臣との会談では、三村団長のあいさつに続き、参加団員から各企業がベトナムで取り組んでいる「高い人間力とマネジメント力を持つベトナム人材の育成」「国による経済政策を後押しする金融事業」「日本のハイクオリティーなサービスへの理解に資する人材交流事業」を紹介するとともに、「日越大学の活用などを通じた人材育成面での協力推進」「経済発展を支える物流分野での外資出資規制の緩和」「観光産業の発展に向けた地方誘客の取り組み推進」などを求めた。 これらの要望に対し、ズン大臣自ら一つ一つ丁寧に回答し、特に複雑な行政手続きの改善と人材育成の強化に注力する旨を示した。加えて、三村団長が、TPP早期発効に共に取り組むべく、ベトナム国会での早期承認手続きを求めると、ズン大臣は「ベトナムはTPPを重視して批准に向けた取り組みを進めている。たとえ米国が参加しなかったとしても、ベトナムはTPPと国内経済の改革を進めていかなければならない」と述べた。

ミャンマー スー・チー国家最高顧問・ティン・チョウ大統領 インフラ整備を進める

ベトナムに続き訪問したミャンマーでは、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問、ティン・チョウ大統領、タン・ミン商業大臣、チョウ・ウィン計画財務大臣らと会談した。 スー・チー国家最高顧問表敬時には、冒頭、三村団長があいさつし、ミャンマー政府に対する提言をスー・チー国家最高顧問へ手交した。スー・チー国家最高顧問は、昨年11月の訪日時に自身が「日本企業がミャンマーに進出する際にどんな課題、どんな困難があるのでしょうか。もしあれば一緒に解決していきたい」と発言したことを振り返り、いただいた提言の四つの課題(インフラ整備、規制・制度改革、中小企業・人材育成、継続的な官民対話)は、われわれも重視している内容であると述べた。

続く会談では、三村団長のあいさつに続き、参加団員から「物流・エネルギー(港湾・発電)」、「ミャンマーでの事業展開と人材育成」に関する自社の取り組みを紹介した。

これに対し、スー・チー国家最高顧問は「電力と交通インフラは全ての基本であり、しっかり整備することで、経済の発展は都市から地方にも波及し、国家は自ら発展していく」「日本企業が引き続きミャンマーにおける能力向上や人材育成に協力していただければ、われわれの発展はさらに加速できる」とコメントした。

インフラについては、地域によって水不足が大きな課題になっていること、人材育成については、ミャンマー国民は教育への関心が高く、ややもすると保健分野よりも教育を重視する傾向があること、物流では内陸水運の活用を重視したい方針などを説明した。

最後に、スー・チー国家最高顧問は、日本からの投資の占める割合が1・02%というのは両国の友好関係に比して少な過ぎると指摘し、「両国の貿易・協力関係を発展させるため、政府として必要な環境整備に取り組んでいく。日本からも課題や問題点をぜひ指摘いただき、共に努力していきたい」と述べた。

続くティン・チョウ大統領との会談では、冒頭の三村団長のあいさつの中で、スー・チー国家最高顧問へ手交した要望書を紹介。続いて日本メコン地域経済委員会委員長の小林洋一顧問(伊藤忠商事・副会長)から、投資・貿易の拡大や技術の移転、人材育成について貢献したいと述べた。

特に人材育成については「日本への留学生・技能実習生が帰国後に日系企業で働けるよう取り組みたい」とした。

これを受けて、ティン・チョウ大統領からは、要望書や人材育成などさまざまな分野での協力提案に感謝するとし、提言で触れた主な分野(インフラ整備、規制・制度改革、中小企業・人材育成)について順番にコメントした。

インフラ整備と規制改革については同じ認識とし、規制改革の一環である新しい投資法について「投資法を制定する中で、友好国が容易に安心して仕事ができるような環境づくりが大切」との考えを示し、国民の声を聞きながら3月には規則・細則が制定されるよう努力をしていると述べた。

また、大企業500社を含む125万の商工会議所会員には、「実際にミャンマーに来て、経済状況を知ってもらって、投資決定となれば」と期待感を示した。中小企業についても経済改革に取り組む中で重要とし、熟達した専門家・労働者を輩出するためのキャパシティービルディングなどの人材育成への協力を要請。「中小企業を応援し、既に進行中の職業訓練により、半年~1年で仕事ができる若者が育つようにしたい」として、小林顧問からの提案に謝意を示した。

さらにティン・チョウ大統領は、若者の技術習得を重要と考え、職業訓練学校での学習機会や若者の雇用の創出を重要視していることにも言及した。

最後に、昨年11月の両国首脳会談で表明された官民合計8000億円規模の支援や、地方開発や少数民族地域の開発へのさらなる支援について謝意を示し、文化と環境さえ守られれば日本企業からのいかなる投資も歓迎すると締めた。

両国で経済ダイアログ開催

ベトナム 両商工会議所の関係強化を

ベトナム商工会議所(VCCI)との共催により、経済ダイアログを開催。ミッション参加者のほか、ベトナム地方自治体の代表、ベトナム経済界、ベトナム日本商工会関係者ら計約200人が参加した。

冒頭、ロックベトナム商工会議所会頭から歓迎あいさつがあり「日本企業はベトナムの社会発展に大きく貢献している。今後もハイテク農業や観光などの分野で両国企業間の連携には大きなチャンスがある。両商工会議所の一層の関係強化に努めたい」と述べた。

三村団長からは「昨日のフック首相への表敬訪問では、首相のVCCIへの厚い信頼を感じた」とした上で、本日のダイアログのテーマは日越両国の連携を深める重要な可能性を持つテーマであると議論への期待が示された。

ダイアログは、「中小企業支援・人材支援」と「経済統合」の2つのセッションに分かれた。

参加者を交えた質疑応答・意見交換では、日本側から、石田徹事務総長(日商専務理事)が中小企業の海外展開支援に向けた関係機関の連携による「新輸出大国コンソーシアム」の取り組み、伊東孝紳副団長(本田技研工業・取締役相談役)から大手製造業による取引先中小企業の育成の取り組みについて紹介。朝田照男副団長(丸紅・取締役会長)からはベトナムにおけるインフラ整備事業推進に資する政府保証の継続について、ベトナム商工会議所からの働き掛けを求めた。

閉会に当たり、両会頭から意見交換への積極的な参加への謝意とともに、今後、日越間の経済関係強化に向けて両会議所で手を取り合って進めていくことが示された。最後に、両会頭のギフト交換の後、参加者全員での名刺交換ネットワーキングが行われた。

ミャンマー 経済・文化面で継続的協力を

ミャンマー連邦共和国商工会議所連合会(UMFCCI)との共催により、経済ダイアログを開催。ミッション参加者のほか、ミャンマー経済界などから207人(日本側75人、ミャンマー側132人)が参加した。

冒頭、UMFCCIのゾー・ミン・ウィン会頭から歓迎あいさつがあり、「日緬両国の経済面・文化面での継続的な協力や日本からの大きな投資・支援を期待する」とした上で、昨年11月にアウン・サン・スー・チー国家最高顧問訪日の際に日緬両国間で作成された「日本・ミャンマー協力プログラム」などに触れ、新投資法の制定により、外国人もミャンマー国民と同じ権利を得たことを好機とし、さらなる日本企業の進出を呼び掛けた。

三村団長からは、ミャンマーは新政権による経済政策の進展や豊かな自然に支えられた農業・食品産業のポテンシャルなど、日本企業の進出先として大変魅力的である一方、インフラ整備や人材育成についてはまだ課題が多いと述べた。また、本日のダイアログのテーマ(「農業・食品」「インフラ」「人材育成」)は、日緬両国にとって時宜を得た重要テーマとして議論への期待が示された。

各セッションの質疑応答ではフロア参加者との間で具体的な意見交換がなされ、コーヒーブレークでは、参加者間で活発な名刺交換・ネットワーキングが行われた。

ティラワ経済特区を視察

本ミッションでは日本とミャンマーの官民共同開発により2015年に開業したティラワ工業団地の視察を行った。参加者数は報道関係者を含む約75人。

ティラワ工業団地内のMyanmar Japan Thilawa Development(MJTD)社で、同社ならびに視察先であるRK Yangon Steel社の概要説明を受けた。

MJTD社の梁井崇史社長は、ティラワへの企業進出が進んでいる理由として、①ミャンマー人の誠実な人柄など「ミャンマーの持つ魅力」、②電力、通信など「ティラワが持つインフラの優位性」、③団地内に税関事務所を持つことによる「簡便な行政手続き」の3点を挙げ、それぞれを解説した。

続いて、株式会社アール・ケイ(本社・大阪市西区、鉄鋼商社)の森田良幸会長(兼Managing Director of RK Yangon Steel)からは、同社の沿革とミャンマー進出について映像を交じえながら説明した。また、同社の髙橋隆治氏からは、ミャンマー進出の理由について「ASEAN各国の発展プロセスに沿ったミャンマー国内における鋼材需要の高い成長可能性」と「周辺にあるインド、中国、さらには南アフリカや中東まで含めた大きな市場への展開可能性」を挙げるとともに、長年のミャンマーでの営業活動で培ったノウハウを生かし、「即納/日本の技術/日本製」を売りに、今後もミャンマーで事業を展開していくと話があった。

現地事情ブリーフィングを実施

本ミッションでは、両国首脳らとの会談を前に、ベトナムでは梅田邦夫駐ベトナム日本大使と進出企業で構成されるベトナム日本商工会の柳井泰司会長らから、ミャンマーでは樋口建史駐ミャンマー日本大使と同様に進出企業で構成されるミャンマー日本商工会議所の隅良太郎会頭らから、現地の最新状況などについてブリーフィングが行われた。

両大使からは各国政府の状況と日本の関係などを、両団体からは各国における事業活動や経済概況などが紹介され、会談前に絶好の情報収集の機会を得られた。