特許庁はこのほど、「2015年度模倣被害調査報告書」を取りまとめた。模倣被害率は21・9%(前年度比0・1ポイント減)と横ばい。インターネット上の被害は62・3%と3年連続6割を超えた。調査は15年9~11月に14年度の状況を国内出願件数の多い上位8069社に聞いた。有効回答率は50・7%。
2015年度模倣被害調査報告書調査分析結果の概要(特許庁)
1.模倣被害の現状と傾向
2014年度の模倣被害率は21・9%であり、前年度被害率から0・1ポイント減少。模倣被害率の推移は02年度(28・8%)をピークとして数年低下傾向に、06年度から増加に転じた後、09年度から減少し、10年度以降は増減を繰り返している。
企業規模別の被害率をみると中小企業が前年度比で増加しており、商品分野別では一般機械・産業機械、運輸・運搬機械が減少したものの、雑貨、電子・電気機器、食品が増加となった。国・地域別の被害傾向では、中国・韓国・台湾などの被害率が依然として高水準にあり、特に中国での被害率が突出している。引き続きアジア地域における模倣被害の動向に注意が必要である。
また、複数の権利での被害やインターネット上での被害は横ばいの傾向にあるが、被害内容は多様化・複雑化している。このような状況に対して、模倣被害対策を講じた企業の割合は、前年度から9・7ポイント増の51・6%となり、企業規模別でみると、大企業は前年度から8・0ポイント増の55・3%、中小企業は前年度から11・1ポイント増の49・0%となった。
2.企業規模、商品分野、権利別の模倣被害動向
⑴業規模別被害動向
大企業の被害率(14年度25・6%)は、中小企業(同19・4%)より高い傾向。直近5年間の傾向をみると、大企業では10年度以降は減少、増加を繰り返したが、14年度は再び減少となった。
中小企業は11年度に増加後、12年度以降は減少傾向だったが、14年度は増加となっている。
⑵商品分野別被害動向
14年度の被害率は、前年度比で雑貨、電子・電気機器、食品が増加、一般機械・産業機械、運輸・運搬機械が減少となった。10年度から14年度の増減では、雑貨、電子・電気機器、運輸・運搬機械、食品分野において被害率が増加、一般機械・産業機械は減少している。
⑶権利別被害動向
知的財産権の権利別では、特許・実用新案、営業秘密・ノウハウは前年度比でやや増加している。ただし、いずれも被害率に大幅な変化は見受けられない。
また、1社当たりの被害権利数について、直近の5年間で比較したところ、被害企業数に占める複数の権利で被害に遭っている企業の割合は、12年度から減少傾向となっているが、被害権利の多様化・複雑化は依然として高い水準にある。
⑷インターネットによる模倣被害動向
インターネット上の模倣被害を受けた企業の割合は62・3%となり、10年度以降、被害を受けた企業の割合は増加傾向にあり、12年度以降は6割を超える高い水準にある。
3.国・地域別の模倣品・サービスの流通構造
⑴模倣被害対策の実施
状況倣被害地域の分布
製造、経由、販売提供のいずれかの被害を受けた国・地域別の被害企業の比率をみると、前年度に引き続き中国での被害社率が最も高く(14年度=64・1%)、次いで韓国(同18・9%)、アセアン6カ国(同18・8%)、台湾(同18・0%)と続いている。
その他の地域では、欧州(同14・7%)、北米(同14・1%)となっており、アジア地域での模倣被害が引き続き深刻な状況となっている。
⑵模倣品・サービスの製造・経由・販売提供
次に製造、経由、販売提供別に模倣被害のあった国・地域別の模倣被害状況をみると、中国のみ当該国内の製造が販売提供を上回っていることが分かり、中国国内で製造された模倣品・サービスが世界各国に流通していることがうかがえる。
模倣品・サービスの製造国・地域については、模倣被害を受けた企業896社のうち、546社が模倣品・サービスは中国で製造されていると回答しており、依然として中国での被害が高水準にある。
なお、中国で製造された模倣品・サービスが、中国自国内で販売提供被害に遭ったと回答している企業の比率が高いが、韓国、台湾、アセアン6カ国、欧州などの地域でも比較的高い。
模倣品・サービスの経由国・地域については中国(被害社数=186社)を挙げる企業の回答が最も高く、次いでアセアン6カ国(同48社)、台湾(同39社)、韓国(同31社)、が続く。ただし、不明との回答も多く(同156社)、経由地域の把握は困難であることがうかがわれる。
模倣品・サービスの販売提供国・地域については、中国(同454社)の被害社が多く、次いでアセアン6カ国(同151社)、台湾(同142社)、韓国(同141社)などアジアでの被害が中心となっている。一方で、欧州(同118社)、北米(同111社)での被害社も多い。
4.企業などにおける模倣被害対策の動向
⑴模倣被害対策の実施状況
14年度の模倣被害対策の実施率(模倣被害対策実施企業/総回答社数)は、前年度比9・7ポイント増の51・6%となった。対策を講じていると回答した企業数は12年度以降減少していたが、14年度は増加となっている。また、企業規模別でみても、大企業は前年度比8・0ポイント増の55・3%、中小企業は前年度比11・1ポイント増の49・0%となり、ともに増加した。
⑵模倣被害対策の内容および国・地域別の対策状況
模倣被害対策の内容は、「国内外での知的財産権の取得」(79・5%)とする回答が最も多く、次いで「専門家(弁理士・弁護士)への相談」(35・2%)、「模倣品の製造業者・販売業者への警告」(24・7%)が続いている。
国・地域別の被害対策の状況については、日本を含めアジア諸国の模倣被害率の高い地域での対策率が高く、日本(69・2%)、中国(47・2%)、韓国(26・1%)、台湾(25・5%)の順となっている。そのほか、アメリカ(25・8%)、西欧(20・6%)での対策率も高い。今後対策を強化する地域としては、中国(19・8%)が多くの企業で挙げられており、次いで日本、アセアン6カ国、韓国、台湾が続き、アジア地域での対策強化を図る傾向がうかがわれる。
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