日本商工会議所は、平成20年に「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」を創設し、地域の個が光り、他の範となる観光振興活動を行う商工会議所を毎年顕彰している。7回目となる今年度は、厳正な審査の結果、大賞の北九州商工会議所をはじめ9商工会議所を選定。いずれの地域も個性的でまちの特色を生かした取り組みで交流人口の増加に貢献していることなどが高く評価された。多彩な活動でリピーター獲得に成功している今年度の各賞の観光振興事業の概要は以下のとおり。
北九州(福岡県) 産業観光を一元管理
北九州商工会議所は、観光振興の新たなアプローチとして「産業観光」に着目。最先端の製造・環境技術の現場や工場景観を資源として活用するとともに、工業都市独特の食文化などの地域資源とを組み合わせた、同地ならではの観光振興にこだわっている。
平成22年産業観光推進委員会を設置。翌年には、同所内に産業観光推進室という専門部署を新設し、工場見学の受け入れ企業の開拓、産業ガイドの育成・活用、旅行代理店への販路開拓などを展開した。行政、観光協会などと観光コンソーシアムを立ち上げ、26年には、北九州産業観光センターを設立。着地型ツアーの実施や、地域の産業観光専門ベンチャー企業の育成・支援、産業観光サイトの開設など、市内の情報を一元的に管理・振興する仕組みを構築した。
こうした取り組みが功を奏し、産業観光ツアーを企画・募集する旅行会社、参加者ともに着実に増加。27年に産業観光客数を年間50万人にするという目標達成に向けてまい進している。
糸魚川(新潟県) 異業種連携で着地型観光を提案
糸魚川市は日本初のヒスイの産地であり、ヒスイ文化発祥の地でもある。糸魚川商工会議所では、平成27年春の北陸新幹線開業に向けて、「ヒーリング(癒やし)」をキーワードに、自然、美容、体験などを連動させた観光メニュー開発に取り組んでいる。
その一つが、ヒスイ宝飾品加工時に廃棄していた切り粉「ヒスイパウダー」を活用した6色の「ヒスイネイル」。観光事業に縁のなかった美容関係事業者と、市内加工事業者の連携で生まれたネイルは、順調に売上を伸ばしている。ネイルとスイーツ、ヒスイの聖地めぐりを組み合わせたツアーも若い女性観光客に好評だ。
市内の飲食業と温泉宿の12事業者が連携して「ヒスイカクテル」も誕生。さまざまな業種の連携により、多様な視点から既成概念にとらわれない観光商品の開発が進む糸魚川の持続的な観光振興への取り組みに注目が集まっている。
足利(栃木県) 個別イベントを総合プロデュース
地域内の周遊性向上に向け、足利商工会議所では、行政や観光関係者と連携して、観光事業の一元化に取り組んでいる。毎年、10~11月の約1カ月間に行われていた市内17の行事・イベントを、平成21年に「足利秋まつり」として集約し、一体感を創出。情報共有や共同で情報発信することで、相乗効果を図った。
さらに、特産の足利銘仙を活用した「足利道楽」の開催など「学び・体験観光」の要素を加え、昨年は期間中、約19万人の集客に成功した。個々のイベントを総合的にプロデュースすることで、相乗効果を高め、まちなかの回遊、交流人口の拡大に成功している。
佐久(長野県) 街道観光を推進
佐久商工会議所では、「モノ・コトづくり」「食づくり」「人づくり」などの多彩な事業を展開。「中山道」を核にした街道観光の推進に力を入れている。
会員企業の異業種連携により、観光用電気自動車「オカーゴ」の開発、地温泉・地卵を使う温泉たまご調理器「おん玉君」の商品化に成功。地場のスキーストックメーカーが製造するポールを使って歩く「ポールウォーキング」の振興や医療機関との連携による観光プログラムも好評だ。広域連携による統一ブランド「中山道街道蕎麦」の普及、市民を対象とした中山道観光ガイド養成講座の開講など、さまざまな業種の産業連携を生み出し、新しいスローツーリズムのモデルづくりに取り組んでいる。
高崎(群馬県) まちづくりと一体
高崎商工会議所では、新しい都市型観光を目指し、中心市街地の魅力向上に努めている。平成25年からオープンカフェ「高カフェ」事業をスタートさせたほか、まちなかの回遊性向上に向け、無料コミュニティーサイクル「高チャリ」を運営。大型店と商店街を観光資源に見立てた「高崎商都博覧会」の実施や、食べ歩きイベント「高崎バル」、地元アーティストの育成を目指す「まちなかライブ」などを定期的に仕掛けている。
これらの効果で、まちなかの滞在時間延長だけでなく、来街者も着実に増加。まちづくりと一体となった観光に成功している。
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