999件に改善指導
中小企業庁はこのほど、平成26年度における下請代金支払遅延等防止法に基づく取り締まり状況などを公表した。書面調査は、親事業者と下請け事業者合わせて約24万件に対して実施。違反の恐れのある親事業者1115件に立ち入り検査などを行い、999件の改善指導を行った。取り締まり状況などの概要は次の通り。
24万件の事業者に書面で調査
平成26年度には、親事業者4万5937件(平成25年度4万5378件)に下請け事業者19万4688件(同21万9292件)を加えた計24万625件(同26万4670件)に対して書面調査を実施した。中小企業庁および地方の各経済産業局では、下請け事業者から下請代金法に違反する恐れのある事業者についての情報提供・申告の受け付けを随時行っており、平成26年度は63件(同65件)を受け付けた。 また、違反の恐れのある1115件(同1090件)に対して立ち入り検査などを実施し、そのうち999件(同990件)に対して書面により改善指導を行った。
さらに、親事業者に対する立ち入り検査によって明らかとなった違反行為の中で、特に下請け事業者に対しての影響が重大である案件については、下請代金法第6条に基づき、中小企業庁長官から公正取引委員会に対して措置請求を行うとともに企業名を公表している。平成26年度においては、1件(同1件)の措置請求を行った。 違反が認められた親事業者のうち288件に対しては、減額した下請け代金、支払遅延に係る遅延利息などについて、合計で約2・1億円(同約4・7億円)の返還を指導した。
違反の最多は支払遅延
違反の内容としては、実体規定関係の禁止行為の違反として「支払代金の支払遅延」と「下請け代金の減額」で全体の約76%を占めるとともに、手続き規定関係の義務違反として発注時の書面の不備や未交付が多く見られ、これら禁止行為や義務違反に対し、改善指導を行った。また、下請代金法の違反行為が今後生じることのないよう、これらの親事業者に対して、社内における体制整備など再発防止についての指導を行った。
また、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(消費税転嫁対策特別措置法)および下請代金法の間で密接な協力体制を構築することにより、より効果的で効率的な運用を確保することとした。
特別事情聴取で法の順守を徹底
立ち入り検査とは別に、平成20年度から、①書面調査が未提出の事業者、②改善指導を連続して受けた事業者、③改善報告書の提出が遅れている事業者などに対して、中小企業庁および経済産業局の幹部などが、社内体制の状況、違反行為が繰り返される理由、今後の改善方針などについての特別事情聴取を行っている。
平成26年度は、7件を対象に特別事情聴取を実施し、違反などの発生原因を確認するとともに、社内説明会や研修の実施、コンプライアンス委員会の設置、内部監査の強化などによって、下請代金法の順守を徹底する体制の整備などについての取り組み状況を確認した。
ガイドラインでルール浸透図る
下請代金法による取締りにとどまらず、業種横断的な下請代金法のルールを各業種に浸透させ、親事業者および下請け事業者の間の適切な取引関係を構築するためには、各業種の取引慣行に応じて具体的に解説したガイドラインの役割が重要であるとの認識の下、これまでに「素形材」、「自動車」、「産業機械・航空機等」、「繊維」、「情報通信機器」、「情報サービス・ソフトウェア」、「広告」、「建設」、「トラック運送」、「建材・住宅設備」、「放送コンテンツ」、「鉄鋼産業」、「化学産業」、「紙・紙加工品産業」、「印刷産業」および「アニメーション制作業」の16業種で下請取引ガイドラインを策定しており、平成26年度においても、下請取引ガイドライン説明会を行うなど、その普及啓発を行った。
また、平成26年12月から平成27年3月にかけて、原材料・エネルギーコストの増加分の適正な価格転嫁に係る望ましい企業間取引事例(ベストプラクティス)などを追加するなど、16業種のうち、建設業、放送コンテンツを除く14業種で下請取引ガイドラインの改訂を行い、業界団体や会員企業などに対する普及啓発を要請した。
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