経済産業省は9日、第27回産業構造審議会総会を開催、2021(令和3)年度経済産業政策の重点をテーマに議論した。日本商工会議所の三村明夫会頭はオンラインで出席し、意見を述べた。
三村会頭は、まず持続化給付金・補助金や資金繰り支援など、政府のさまざまなコロナ支援に謝意を示すとともに、感染症対策と経済活動の両立に向け、あらゆる政策の総動員を要請した。
ウィズコロナからポストコロナへの移行については、ポストコロナ時代は、地政学、自然災害、パンデミックなどさまざまな観点で、かつてないほど不確実性が高まると指摘。「この環境下で国が生き抜いていくためには、不確実性を吸収するための『戦略的なゆとり』を国の施策として取り入れるべき」との考えを示した。
その上で、政策を検討する際の基軸として、4点挙げた。一つ目は、短期的効率性から長期的耐久性へのシフト、あるいは東京への人口一極集中に見られるように集積と分散のリバランス。二つ目は、これまでの経済合理性の追求に対し、安全保障の観点からのリバランスを説いた。三つ目は、今回のコロナ禍で社会経済にとって貴重なインフラであることが明確になった医療提供体制の安定化。四つ目は、年々、激甚化する自然災害に対する強靭(きょうじん)性の確保を提示した。
これらをやり遂げるには、デジタル実装による抜本的なわが国の生産性向上が重要と強調。そのためには、電子政府の推進、中小企業におけるデジタル技術の実装が急務との認識を示した。
また、サプライチェーン全体の付加価値の向上や取引価格の適正化に向け、「パートナーシップ構築宣言」の普及・実行、特許の保護強化の必要性を指摘した。さらに、東京一極集中是正による地方創生の推進、今後のわが国のエネルギー政策についても見解を示した。
東京一極集中是正による地方創生の推進に関しては、コロナ禍と自然災害によりはっきりしたことは、人口が都市に集中することは国全体として大きなリスクであり、そこに住む人間にも住むことの大きなリスクが顕在化したと示唆。
今後のわが国のエネルギー政策に関しては、非効率石炭火力のフェードアウト、再生可能エネルギーの主力電源化などの方向性には異論はなく、同時に「3E+S」エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)、安全性(Safety)を前提とした、実態に基づいたバランスの取れたエネルギー政策が重要とした。「温室効果ガス削減および安定かつ安価な電力供給を行うためには、安全性を最優先させた上で原発再稼働を推進すべきであり、政府は原子力発電に対する姿勢を明確に示し、対策を取るべき」との認識を示した。
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