“消費者目線”から 〜消費生活アドバイザーの経営ワンポイント・アドバイス〜 vol.1

今後、加工食品を購入する際の情報として、どの程度原料原産地表示を参考にしていくか

「食品表示」を ビジネスチャンスに・・・

消費者庁は今年の9月、食品表示法の食品表示基準を改正し、国内で製造される全ての加工食品について、重量割合1位の原材料の原産地表示を義務付けた。かつて小泉元首相が「安全で、おいしいのが日本の農産物。中国では日本のりんごが、1個2000円で売られている」と発言して大きな話題となったが、日本産のりんごへの信頼性は高く、海外では日本国内より高値で取引されているようだ。加工食品についても日本産という原産地表示がさらに価値を生むことになるのだろうか。

これまでも日本では農作物に限らず、食品製造の現場でおいしく安全な商品を消費者へ提供するためのさまざまな技術開発や取り組みが展開されてきた。しかし、そうした活動の成果である商品が消費者に受け入れられるためには“消費者目線”を的確に捉えることが重要になる。だが、これがなかなか難しい。消費者といっても、年齢や生活習慣、居住地など一人一人の生活スタイルは、ひとくくりに把握しきれるものでない。でも、製品やサービスは、ターゲットとする消費者像をより具体的に設定することで、さらに質の高い製品やサービスの提供が可能となり、利用する人々のニーズや期待に応えられるものだ。

消費者目線を読み解くためには「安全と安心」という二つのキーワードがある。食品の安全において、ゼロリスクなどあり得ない。そこで生産や製造の現場では、たとえ天候不順であっても、また人手不足の状況にあっても、経営方針に基づき最大限のマンパワーを活用して潜んでいるリスクを事前に洗い出し、長年にわたり積み重ねてきた経験や知識、技術を駆使して、安定供給と品質の向上が図られてきた。これが消費者の安心につながるもので、食品表示はいわば、そうした取り組みの結果を示すものである。

食品表示は、安全に直接は影響しない表示内容の間違いや欠落であっても、多くの食品が回収され、廃棄されることがある。何を表示するかは事業者の経営に大きな影響を与えるだけでなく、結果として価格に反映され、消費者に影響が及ぶ。また、安全を確保するためには、さらに進めて、生産者や事業者が安全のために行っている取り組み情報や、アレルゲンの使用状況と混入可能性、保管や調理の方法など安全に関わる重要情報を分かりやすく表示していくことも大切で、これこそが消費者目線の取り組みと言える。

東京オリンピック・パラリンピックを控えて、食品の安全と表示が注目されている。消費者目線の食品表示は、消費者だけでなく、事業者にとっても大きなメリットがある。日本の食品は「安全で安心」と、世界に向けてブランド化できる好機、すなわちビジネスチャンスと捉えることも必要だろう。

このコラムについて

“消費者目線”からは、消費生活アドバイザー(※)が、消費者の視点で経営に役立つヒントをご提供するコーナーです。

※消費生活アドバイザーとは……消費者の声を経営に反映させたり苦情相談に対応する人材養成のため一般財団法人日本産業協会が行う内閣総理大臣・経済産業大臣事業認定資格

戸部 依子(とべ・よりこ) 公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(通称NACS) 消費生活研究所 所長大阪府生まれ、消費生活アドバイザー12期 近畿大学農学部食品栄養学科、慶應義塾大学法学部法律学科卒業 ライオン株式会社、研究開発本部および品質保証部を経て、現在に至る。医薬品、食品、医療分野の品質保証、食品安全に関する研究とマネジメントシステム認証審査業務に携わっている

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