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“消費者目線”から 〜消費生活アドバイザーの経営ワンポイント・アドバイス〜 vol.4

消費者志向マネジメントシステムNACS基準

お客様第一というけれど……今、なぜ「消費者志向経営」が問われているのか

企業の経営方針にお客様第一を掲げないところはないほど日本企業の顧客満足経営への努力はすばらしい。しかし、本当にその方向性や内容に問題はないだろうか。

お客様第一を「お客様の苦情に真摯に応えること」、あるいは「消費者のニーズに応えた商品提供をすること」とのみ考えていないだろうか。「安全」について消費者への情報提供は十分だろうか、コスト削減や効率をことさら優先していないだろうか。「広告・表示」はどうだろうか。商品・サービスを〝売る〟ことに力を入れるあまり、デメリット情報の提供を怠ってはいないだろうか。企業と消費者における情報格差という実態を踏まえないで広告・表示をすると、消費者の不利益や被害を生じさせかねないことになる。企業のお客様第一の実態は〝消費者目線〟の経営からは、まだ課題があるように思われる。

さらに今日、持続可能な社会の構築への貢献が政府のみならず企業に求められるようになっているなか、お客様第一を貫くと不都合なこともある。安い、便利な商品などを提供する際に環境破壊や安い労働力を利用することが大きな社会問題にもなっている。現代のお客様第一は消費者の利益を重視しながらも、社会や環境への責任が問われ、資源枯渇、食品ロス、ゴミ問題、人権問題など多種多様な課題を消費者とともに解決することが求められている。

今、経営には商品などの品質、広告・表示、消費者の被害救済など多方面での消費者視点が求められ、しかもそれには持続可能な社会の観点を加える必要があるといえる。企業によっては、これらの要請を基準やマニュアルなどで具体化し、消費者に適時適切に情報開示する、さらにこれらを効果的に進めるために消費者問題の専門家との対話を経営の仕組みに取り入れるところもある。

これからの企業は自社のお客様第一の実態を見直し、現在求められている消費者志向経営を再構築する必要があるのではないだろうか。その際に第三者的なガイドラインを参考にすることも有益である。例として、消費者庁の消費者志向経営の検討会報告書で示された7つの取り組みの柱(経営トップのコミットメント、コーポレートガバナンスの確保、従業員の積極的活動、事業関連部門と品消法関連部門の有機的連携、消費者への情報提供の充実・双方向の情報交換、消費者・社会の要望を踏まえた改善・開発、活動の結果の評価と見直し)やNACS(公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)の消費者志向マネジメントシステムNACS基準(図)などがある。世の中の動きは急である。従来の延長線上では企業は戦えない。本質的な消費者志向経営によるこれからの発展を期待したい。

このコラムについて

*品消法関連部門:品質保証部門、消費者・顧客対応部門及びコンプライアンス関連部門の総称 「“消費者目線”から」は、消費生活アドバイザー(※)が、消費者の視点で経営に役立つヒントをご提供するコーナーです。

※消費生活アドバイザーとは……消費者の声を経営に反映させたり苦情相談に対応する人材養成のため一般財団法人日本産業協会が行う内閣総理大臣・経済産業大臣事業認定資格

古谷 由紀子(ふるや・ゆきこ) 博士(総合政策)。消費生活アドバイザー8期。 公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)常任顧問、経営倫理実践研究センターフェロー、サステナビリティ消費者会議代表、CSRレビューフォーラム共同代表も務める。主な著書に『現代の消費者主権』2017(芙蓉書房出版)、論文に「『持続可能な消費』を進めるために」2017(企業と社会フォーラム学会誌)がある。企業のコンプライアンスやCSR等に参加するほか、消費者市民社会構築に向けた消費者教育も行っている。

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