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“消費者目線”から 〜消費生活アドバイザーの経営ワンポイント・アドバイス〜 vol.3

日本のBtoC–EC(電子商取引)市場規模の推移 (出所)経済産業省『平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)』

フィンテックを活用した新たな資金調達

金融サービスに関する提言を広く学生から募集する「日銀グランプリ~キャンパスからの提言~」で「健康通貨」という仮想通貨を採りあげた学生が最優秀賞を受賞した。自分が運動すると自治体から地元の商店街などで使える仮想通貨がもらえる仕組みの提案だ。 最近、ITを活用した革新的な金融サービスである「フィンテック(FinTech)」という言葉をよく目にするようになったが、この「健康通貨」もその一つである。

フィンテックを活用した新たなスキームの中でも、特に経営者にとって興味深いのは、トランザクション・レンディングと呼ばれる融資形態ではないだろうか。トランザクション・レンディングは、主にEC(電子商取引)市場に出店している事業者を対象に決算書などの提出を求めず、無対面かつ無担保、そのうえ審査についてもわずか数日(早ければ翌日)で結論が出る商品だ。

日本国内のBtoCのEC(電子商取引)市場は、年間10%前後の成長率で市場規模は15兆円を超える(下図参照)。加えて、この市場の特徴は、とにかくスピードが速いこと。メディアなどを通じて話題になれば、その関連商品は、とにかくよく売れる。売れる代わりに商品のライフサイクルが短いものも少なくはない。そのような時に、資金調達に時間を要していては、タイムリーな商売ができなくなってしまう。機会損失を発生させないためにも、商売同様に資金調達にスピードが求められる。しかし、この融資形態は、国内の金融機関でもまだ取り扱いが始まってそれほど歴史があるわけではない。融資条件なども様子を見ながら、利用者の利便性を第一に改善を重ねつつ推進している状況にある。

また、流行のAI(人工知能)が審査に活用されるといっても、AIだけで審査が完了するわけではないし、そのAI自体もまだまだ進化の途上にある。「病気を診るのと病人を診るのは違う」と医学部では教えられると聞くが、同様に決算書を分析することと、その結果として融資の可否を判断することは少し違う。それぞれの企業の商品やサービス、技術は、当然のことながらみな違いがあり、対象とするマーケットも違えば商売の歴史も違う。

これらを総合的に考えて、金融機関は経営者と付き合っていくことになるが、一方で、経営者は、一定の金額の範囲内で、また一定の条件の下で、トランザクション・レンディングという全く新しい概念に基づいた融資を資金調達の一つの選択肢として考えてみてもよいのではないだろうか。

消費者庁の「2016年度消費生活に関する意識調査」によれば、フィンテックの認知度はまだまだ低いが、利用者からの評価は高い。今後、フィンテックを活用した新たなスキームの検討が各方面でさらに進んでいく。最近の消費者は「変化への対応にすぐれた企業を選ぶ」傾向が強まっていると感じる。これも消費者目線を読み解く一つの要素と考えるべきだと思う。

このコラムについて

“消費者目線”からは、消費生活アドバイザー(※)が、消費者の視点で経営に役立つヒントをご提供するコーナーです。

※消費生活アドバイザーとは……消費者の声を経営に反映させたり苦情相談に対応する人材養成のため一般財団法人日本産業協会が行う内閣総理大臣・経済産業大臣事業認定資格

岡本 康昭(おかもと・やすあき) 株式会社ジャパンネット銀行 執行役員モニタリング本部長 山口県生まれ、消費生活アドバイザー34期 1983年住友銀行(現三井住友銀行)入行。2011年よりジャパンネット銀行。CS部門を担当後、2014年より現職。主に、法人融資の企画・審査を担当。中小企業診断士。趣味は寺で坐禅を組むこと

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