まちづくりの先進事例 Vol.2 ~ドイツ・ローテンブルク~ 中世のまちは全て「本物」

オープンカフェでくつろぐ人々。後ろに日本語の看板が見える

ローテンブルクは南ドイツの北、古城街道とロマンティック街道が交差する地点にある人口約1万の小都市で、城壁に囲まれた中世のままの旧市街が魅力の観光地だ。国内に類似する名称の都市があり、正式には「ローテンブルク・オプ・デア・タウバー」という。

昨年12月に公表された連邦統計局の資料によると、2012年に同市に宿泊した33・5万人のうち、約6割にあたる19・8万人は外国からの来街者。国別に見ると、最も多いのは日本の6・5万人で、以下米国3・3万人、オランダ1・3万人と続く。ビジネス需要はほとんど考えられないことから、多くが観光目的での滞在であろう。

旧市街はまるごと観光資源

このまちの特徴は、観光地でありながら目玉となる観光施設が存在しないことだ。同じく外国人観光客に人気があるフュッセンにはノイシュヴァンシュタイン城、ケルンには大聖堂がある。しかし、ローテンブルクにはそういったものはなく、城壁に囲まれた「まち」と「伝統・文化」、そして、そこにある「店」がまとまって一つの観光資源となっており、その姿はむしろ一つのテーマパークのようだ。

テーマパークと異なるのは、ここが人々の生活の場であり、まちも店も生きているということである。毎年多くの人が訪れるイベントも単なる集客のための催しではなく、歴史ある伝統行事。つまり、ここにあるものは全て「本物」だ。

まちを歩くと多くの日本人観光客に出会う。ほとんどはツアー客だが、個人旅行者の姿も見受けられる。ビジネス客や個人旅行者はある程度の外国語力を持っていることが多いが、ツアー客の場合、そうとは限らない。そのため、あちこちで日本語の看板を目にする。「日本からのお客さまの多くは短い日程のツアーで複数都市を回られていて、このまちで自由に動ける時間はわずか。店頭に来られるのは一度だけでも、商品を購入し、帰国された後にまた電話やインターネットでご注文をいただくことも多いですね」と話すのは、市内でワインショップを経営するバウムバッハ英久子(えくこ)さん。以前は別の都市で日本向けにワインの通信販売を行っていたが、06年にこのまちに店を構えた。品質はもちろん、日本語での丁寧なサービスや日本の自宅への配送サービスも旅行者に好評なようだ。

工業都市の側面も

世界的に有名な観光地とはいえ、まちは生活の場でもある。旧市街では観光客向けの店舗が軒を連ね、居住者向けの食料品・日用品店が少ないため、他都市と比較してまちなか居住の利便性は高くない。旧市街から一歩外に出れば、そこはごく普通の住宅街だ。市の東部には約1500haの工業団地もあり、大手電機メーカーや製菓会社の工場が立ち並んでいる。

観光客の数や土産品の売れ行きは景気と為替相場に大きく左右されてしまう。観光産業がこのまちを活気づけているのは間違いないが、観光だけに頼らない「普通のまち」としての側面を持っているところもまた、このまちの強みかもしれない。

遠藤俊太郎/カッセル大学(ドイツ)

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