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真壁昭夫の経済底流を読み解く 今後の世界経済とわが国の進むべき道

世界経済は、新型コロナウイルスの感染再拡大懸念や、米中対立の鮮明化などによって回復への足取りが鈍くなっている。世界的な感染再拡大によって人の動き=動線が阻害され、各国で個人消費の落ち込みが鮮明だ。それに加えて、米中の対立が鮮明化していることも、世界経済にとってマイナス要因だ。各国が本格的な景気回復を実現することは容易ではない。今後の展開を考えると、とりあえず世界経済のV字回復は期待しにくいとみられる。

新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念が、世界経済の回復の道に影を落としている。今年4~6月期、米国の実質GDP成長率は前期比年率で32・9%減だった。最も大きな要因は個人消費が減少したことだ。感染対策のための都市封鎖などによって人の動線が絞られ、人々が不要不急の消費を控えた影響は大きい。米国では7月末で失業給付の特例措置(週370ドル(平均)に600ドルを上乗せ)が失効した。失効が近づくにつれ、米国の小売売上高の増勢は鈍化した。同期間、中国の実質GDP成長率は前年同期比3・2%増だった。共産党政権が金融・財政政策を強化して公共事業を積み増し、電気自動車(EV)の販売補助金を延長したことなどがプラス成長を支えた。それにも拘らず、7月の中国の小売売上高が前年同月比1・1%減だったことは、先行き不安から消費者が節約志向を強めていることを示唆している。米中の2大経済大国の個人消費が低調に推移する可能性を踏まえると、世界経済の回復は一筋縄ではいかないだろう。

個人消費の低迷に加えて、世界経済は米中対立の激化にも直面している。今起きていることは、政治、経済、安全保障のリーダーである米国と中国の覇権国争いだ。経済面にフォーカスすれば、米国の‶自由資本主義体制〟と共産党政権の指揮に基づく経済運営を重視する中国の‶国家資本主義体制〟の勢力争いがし烈化している。トランプ政権はIT先端分野での制裁強化だけでなく、中国の人権問題、南シナ海の領有権主張、新型コロナウイルス感染の事実隠蔽(いんぺい)などを強く批判している。特に、IT先端分野で米国は中国の通信機器大手ファーウェイへの半導体供給網を事実上遮断した。また米国政府は、同社をはじめIT先端企業5社やテンセントのウィーチャットなどのSNSアプリとの取引を禁止。さらに、米国は台湾とのFTA交渉を目指すなど、より多くの国を自由資本主義陣営に取り込もうとしている。

その一方で、中国は、補助金政策など国内産業の振興策をとって米国に対抗している。最新の半導体製造能力を確立できていない弱みを克服するために、中国政府は法人税の減免などを通して半導体受託製造企業の競争力強化に取り組んでいる。中国は経済成長の限界に加えて新型コロナウイルス発生の結果、習近平国家主席の権力基盤は不安定化しているとみられる。同氏の求心力を維持するためにも米国に譲歩できないだろう。当面、米中の対立は先鋭化するだろう。

現在、わが国は安全保障面では米国との関係を強固にし、中国の人権問題などに対して反対の立場をとっている。それを続けるためには、中国の圧力に直面するアジア新興国や、域内の連携強化を目指すEU各国との関係強化が不可欠だ。アジアや欧州各国との連携強化は、わが国が多国間の経済連携を目指すために欠かせない。そしてもう一つ重要なことは、技術先進国としての地位の確立だ。今、わが国企業は半導体の素材や製造装置、セラミックコンデンサ、画像処理センサーなどの分野で高い競争力を有する。そうした自国の強みを一層磨くことによって、わが国は米中から必要とされる最新の技術や素材を生み出すことを目指すべきだ。それができれば、わが国は国際社会で必要とされる国であり続け、発言力を維持することができる。わが国は構造改革を推進し、民間の新しい取り組みを引き出す必要がある。先端分野の技術力向上に向けた構造改革の推進は、わが国経済の今後に無視できない影響を与えることになるはずだ。

まかべ・あきお 1953年神奈川県生まれ。76年、一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。83年7月ロンドン大学経営学部大学院卒業。メリルリンチ社ニューヨーク本社出向などの後、市場営業部、資金証券部を経て、第一勧銀総合研究所金融市場調査部長。現在、法政大学大学院教授。日商総合政策委員会委員。『はじめての金融工学』(講談社現代新書)など著書多数。

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