日商 Assist Biz

更新

コラム石垣 2017年6月1日号 中村恒夫

米国のトランプ大統領とメディアの対立が先鋭化している。昨年の大統領選を巡る「ロシアゲート疑惑」は司法省が特別検察官を任命する事態に発展したが、既存メディアを否定しトランプ氏を支持した有権者は「報道の方がフェイクニュースだ」と当面、言い張る可能性が強い。

▼リーマンショックに至る過程を振り返ると、危機のきっかけを作ったサブプライムローンの問題点に警鐘を鳴らした報道は少なかった。借金を抱え住宅を手放した消費者が数多くいた一方で、ウォール街の大手金融機関は大半が存続し、政権やメディアに対する不信感が募る結果につながった。日本でも記事を通じて結果的にバブル経済をあおったことを、公式の立場で反省した報道機関は皆無だろう。

▼今春、就職活動中の学生に会った際、彼が印象深い言葉を語っていた。「事実報道の中に、新聞社の主張が混じっている記事が多いように思いますが、あれでは読む気を失います」。マスコミの世界に身を置く者にとって、耳が痛くなるような厳しい指摘である。主張したいことがあるのならば、論説や解説で取り上げるべきだとこの学生は言っていた。

▼ある報道を巡って「角度をつけた記事」、つまり一定の方向性を持たせた記事に対する批判が高まったが、最近ではまた、そうしたものが増えているように感じる。取材源を明らかにしない「関係者」という表現も頻繁に目にする。「匿名ならニュースにしても良い」と取材先が言ったとしても「関係者の証言」では今や読者が納得しない。事実と主張を混在させた記事を垂れ流すのではなく、明確な根拠を示した報道が結局、読者のニュース離れを防ぐことにつながると考えている。

(時事通信社取締役・中村恒夫)

次の記事

コラム石垣 2017年6月11日号 中山文麿

政治経済社会研究所代表 中山文麿

先月末、イタリアのタオルミナで主要国首脳会議(サミット)が開催された。トランプ米大統領は先の大統領選の公約であった保護主義の考えを主張した...

前の記事

コラム石垣 2017年5月21日号 丁野朗

東洋大学大学院国際観光学部客員教授 丁野朗

日本を象徴する「百の物語」を創出し、地域ブランドの確立と国内外の観光交流に生かす。「日本遺産」を一言で表現するとこうなろうか。この4月末、...

関連記事

コラム石垣 2021年10月1日号 中村恒夫

時事総合研究所客員研究員 中村恒夫

来年に予定される韓国の大統領選では、有力候補の1人がベーシックインカム(最低限所得保障制度)の導入を主張している。日本でも選挙公約に盛り込...

コラム石垣 2021年9月21日号 丁野朗

日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野朗

観光にとって地域の文化財や文化資源の重要性は改めて指摘するまでもない。▼昨年5月に制定された文化観光推進法は、博物館・美術館などのミュージ...

コラム石垣 2021年9月11日号 宇津井輝史

コラムニスト 宇津井輝史

人を外見で識別するのは顔である。コロナ禍では、顔という個人情報がマスクで守られる。顔は多くの動物にある。食物の摂取機能からみて顔の始まり...