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こうしてヒット商品は生まれた! なんでもマスク

両端に付いたクリップをガーゼやハンカチなどに装着するだけでマスクに早変わり。11~19㎝まで自在に長さが変えられる長さ調整タイプは、全7色で各1100円(税込)。15㎝と18㎝タイプ各880円(税込)もある

2006年に生活雑貨品の小売業として独立創業し、のちに商品企画販売業に業態転換したA.Y.Judie(エイワイジュディ)。新型コロナで緊急事態宣言が発令された昨年4月、同社が考案・開発したのが「なんでもマスク」だ。市場でマスクが品薄だったこともあり、発売とともに完売するほどの大きな反響を呼び、現在も根強い支持を受けている。

「こんなものが欲しい」の声を形にして販売

「そういう手があったか!」と手のひらをポンと叩きたくなるアイデアである。オリジナルグッズの企画販売を行うA.Y.Judieが、コロナ禍の昨年4月に発売した「なんでもマスク」のことだ。マスクといっても鼻や口を覆う部分はなく、耳に掛けるストラップ部分のみ。両端に付いているクリップで、畳んだガーゼやハンカチなどを挟めば、簡易マスクに早変わりするというすぐれものだ。

「既成のマスクを長時間使っていると、耳が痛くなるという訴えを多く聞きます。その点『なんでもマスク』は、肌触りが滑らかで適度に伸縮する平ゴムを使用しているので、耳へのストレスが少なく、フィット感もいいんです」と同社社長の土屋香南子さんは説明する。

同社の前身は、土屋さんの両親が営んでいた生活雑貨の小売業だ。一時は長野県を中心とした地域で20数店舗を展開するまでに事業を拡大したが、手先の器用だった母親が「自分で企画したものをつくりたい」と2006年に独立する。当初こそ小売りを行っていたが、07年にはオリジナル商品の企画販売業にシフトし、顧客の「こういうものをつくってほしい」という声に応じて生活雑貨や和雑貨、文具雑貨と商材を増やしていった。

「母は父とともに小売店をやってきた20数年間、自分も働く女性の一人として、女性がビジネスシーンで使えるデザインのものがあまりないと感じていました。そんな思いから、シンプルで機能性が高く、女性らしい‶ツヤ感〟もあり、毎日使いたくなるものを中心に展開してきました」

18年には東京にショールーム兼直営店をオープン、20年3月に母親は会長に、土屋さんが社長に就任して、「さあ、これから」というタイミングで襲ってきたのが新型コロナウイルス感染症の影響だった。

マスク本体ではなく紐に着目する逆転の発想

「本来3月4月というのは、新生活の始まりに合わせてものを買い替える、当社にとっては書き入れ時です。ところが、昨年は4月の緊急事態宣言が出る前から、週末の外出自粛や小売店の時短営業を余儀なくされ、日に日に売り上げが下がっていきました」

経営は、融資や雇用調整助成金の活用で乗り切りを図る一方、「こんな時期に求められている商品は何か」と新たな商品企画のことばかり考えていた。もちろん手づくりマスクも考えたが、同社では衛生用品をつくる設備も環境も整っていなかったため、いったんは諦めたという。

「そんなときグッズ製造チームの1人が言ったんです。『今は手づくりマスク自体をつくれない人もいるから、手持ちのガーゼやハンカチなどを使ってマスクがつくれる紐(ひも)があったらいいんじゃない』と」

そのスタッフはグッズ製作に使用するクリップを普段から保管していて、それを何かに使えるのでは? とアイデアを提供してくれた。同社にマスクの知識はなくても、紐やクリップの知識は豊富にある。こうして商品開発に乗り出したのが3月25日のことだ。

「クリップの形はすぐに決まりましたが、紐には苦戦しました。とにかく早く世に出したかったので、紐の材質を厳選して、色やサイズも決めて、4月7日にオンラインショップで発売する予定でした」

ところが、1日に出したプレスリリースを見た誰かが「これ便利そう」とつぶやいたツイッターの投稿が瞬く間に拡散。翌日から問い合わせの電話が鳴りやまず、発売日に合わせて用意した800本は10分で完売した。それが話題となり、新聞やテレビに取り上げられたこともあり、さらに問い合わせが増えて、商品を出すと完売という日々が続く。あまりの反響に、ほかの商品の製作を担当するスタッフを総動員して生産量を週5000本まで増やしたが、4~5月は生産が追い付かなかった。

メーカーだがユーザーでもあるという視点で商品を提供

目が回るような忙しさの中でも、商品の改良を怠らなかった。当初はスピード感を重視するため、紐の長さが15㎝と18㎝の2サイズ展開だったが、その後長さ調節機能付きをラインアップに加えた。さらに、基本の4色に、ネイビー、オレンジ、ルージュの3色を追加する。ファンデーションなどの色移りが気になる女性のニーズを意識したものだ。

「新型コロナが収束すれば、売れ行きが鈍化することは予想していました。実際、7月に下降し始め、8月にガクンと落ちました。でも、その一方でずっと使い続けたいという人もいたのは、長さ調節機能の付いたシリーズ品をつくったことが大きかったと感じています」

現在までの同商品の累計販売数は7万5000本を数える。不織布マスクが再び市場に出回るようになったが、「ずっと付けていると耳が痛い」「呼吸がしづらい」「紐が切れてしまった」という難点がある。その点、同商品は気に入った着け心地にカスタマイズできることから、現在も一定の売れ行きを維持しているという。

「新型コロナをきっかけに、世の中で‶働く〟と‶暮らす〟が融合してきていると感じています。私たちはメーカーですが、ユーザーでもある。私は何が欲しいのか? と、常にユーザーの立場に立って商品を提供していきたい」と結んだ。

会社データ

社名:株式会社A.Y.Judie(えいわいじゅでぃ)

所在地:長野県小諸市市818-1

電話:0267-46-8777

HP:https://ayjudie.com/

代表者:土屋 香南子 代表取締役社長

設立:2006年

従業員:12人

※月刊石垣2021年1月号に掲載された記事です。

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