日商 Assist Biz

更新

コラム石垣 2021年3月1日号 中山文麿

先月、待ちに待った米製薬大手のファイザー社の40万回分のワクチンが日本に到着した。まず医療従事者から始まり、次に高齢者に接種される予定である。通常、ワクチンの開発に、例えば、水ぼうそうに28年、BCGに13年かかるなど、10年以上必要としていた。また、インフルエンザの伝統的な不活化ワクチンの製造には受精卵を使うなど、大量生産にも制約があった。

▼今回の新型コロナウイルスの遺伝子を使ったメッセンジャーRNAワクチン(mRNA)の場合は信じられないくらい迅速に設計・製造が行われた。例えば、米モデルナ社のmRNAの場合、昨年1月13日に新型コロナウイルスの遺伝子の配列が公開されたその2日後にmRNAの設計図が決定され、44日後には治験用ワクチンが出荷された。また、大量生産も容易だ。

▼mRNAは接種後、ヒトの体内で遺伝子が働き、新型コロナウイルスのスパイクがつくられる。すると、ヒトの免疫反応が作動してこのスパイクに対する抗体ができる。その結果、新型コロナウイルスが体内に侵入して来た時にこの抗体がウイルスをやっつける。

▼このタイプのワクチンが実用化されたことは過去一度もない。しかし、幸いなことに欧米の接種結果からは重篤な副反応の発生件数は極めて限定的だ。なお、このワクチンは感染を予防するのではなく、感染した後の発症や重症化を緩和するものである。

▼コロナウイルスのうちSARSは3カ月で消えたが、MERSはまだこの世に存在する。新型コロナウイルスも今後頻繁に変異を繰り返していくが、ファイザー社は6週間もあればその変異に対応したワクチンをつくれるとしている。このmRNAに大いに期待したい。

(政治経済社会研究所代表・中山文麿)

次の記事

都市にも「逆転」は起こり得る。パリの中央部をゆったりと流れるセーヌ川。今でこそ観光客でにぎわう名所だが、19世紀半ば頃は、異臭が立ち込めるコレラ菌の発生源であった。当…

前の記事

時事総合研究所客員研究員 中村恒夫

「リモートワークが広がっている今こそ、言葉の力が大事だ」と長くメディアの世界に身を置いた団体役員は話す。組織のトップが目の前で身振り手振りを交えて発言すれば、言葉が…

関連記事

政治経済社会研究所代表 中山文麿

中国の習近平国家主席は尖閣諸島を台湾と同じく核心的利益と位置付けている。同氏は国家主席の定年制を撤廃して終身任務に就くことを可能とし、国民に「中国の夢」を語り、建国…

時事総合研究所客員研究員 中村恒夫

例年の春ならば、都心を忙しそうに歩く就活生の姿がめっきり減った。オンラインによる面接が一般化してきたためだろう。面接室に入って来たときのあいさつ、複数の面接官に対す…

観光未来プランナー 丁野朗

もう何度目かの訪問となるが、3月半ば、福井県の九頭竜川上流域にある勝山市の平泉寺白山神社を訪ねた。平泉寺は、717(養老元)年に泰澄によって開かれた1300年の歴史を持つ古…