コラム石垣 2021年5月1日号 神田玲子

「人手が足りない」という弁解を聞くことが多い。日本は人口減少の危機に直面していると再三聞かされているうちに、「人手不足」という言葉が免罪符になると誤解しているようだ。新型コロナウイルス感染症への対応でも、PCR検査技師が足りない、重症患者を治療できる医師がいない、ワクチンにしても接種する医師が不足していると何度も喧伝(けんでん)された。コロナ禍に限らず、台風などの大規模な自然災害が起これば、人手不足で業務が回らなくなることを懸念する自治体も多い。

▼しかし、日本は一億二千万人以上の人口を有し、世界で11番目の大国であることを忘れてはならない。これほどの人口大国で、人手が足りないというのは、人材を無駄にしているからにほかならない。その顕著な例が、医療機関における「官と民の壁」である。国公立の病院は行政の指揮下にあるが、緊急時でさえ民間の病院に対しては要請が限界で、動員まではできないという。医療機関は、治療を求めている人々に対し、官民の区別なく協力することは役目として当然だ。それすらできない異常な状況を一刻も早く是正すべきなのは医療分野に限ったことではない。緊急時には、官と民の壁を越えて組織や人々が協力する態勢を組むべきだ。

▼そのために、政府は緊急時に必要となるスキルや知識を洗い出し、いざというときの活用範囲や動員方法を、平生から準備しておくことが必要だろう。地域のさまざまな市民活動などのネットワークを行政が活用することで、市民の間の信頼関係を行政に生かすことも有効だ。一億総活躍のスローガンは消えてしまったのか。人口大国である日本で、「人手不足」は免罪符たり得ない。

(NIRA総合研究開発機構理事・神田玲子)

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