新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が最初に発令された昨年4月から、すでに14カ月近くが経過した。いまだ、感染終息のめどは立たず、頼みのワクチン接種の終了時期も読めない。
▼この間、多くの業界が多大な影響を被る中、とりわけ観光関連産業への影響は甚大だ。収入のめどが立たず、借入金返済や税金支払いも危うい状況となっている。筆者も参加する日本商工会議所観光・インバウンド専門委員会からも、4月20日、「観光関連産業の再活性化に向けた要望」を赤羽国交大臣に提言した。
▼このような状況の中、昨年来、観光庁も関連業界におけるコロナ禍での事業再構築に向けた取り組みを急いでいる。その一つが「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証事業である。2次にわたる公募で、全国から3400件を超える異例の応募があり、この中から550件程度が採択された。本年度は「域内連携促進に向けた実証事業」の公募(1次)が行われ、やはり1000件を超える応募があった。
▼実証事業は補助金とは異なる。困難の中での新たな事業モデルの構築に係る社会実験であり、従って地域の自己負担無しで国費が100%投入される。社会課題を解決する優れた事業モデルは、同じ課題に直面した地域・事業には貴重な先例となろう。
▼域内連携促進事業では、これまで観光業界が深く関わってこなかった製造業や農林漁業など、地域の根幹にある産業との事業連携モデルの構築である。コロナの有無にかかわらず、観光業界は、いま異分野との連携が求められている。観光は観光業だけではできない。その当たり前のことが、ようやく認識され始めたとも言える。 (日本観光振興協会総合研究所顧問・丁野朗)
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