日本商工会議所は1日、新型コロナウイルスのワクチン接種について、中小企業を集めた共同接種に使えるワクチンが不足し、職域接種を申請した多くの商工会議所が、厚生労働省の承認が得られていないとして、職域接種の速やかな承認と確実なワクチン供給を強く求める緊急要望を政府に提出した。日商の三村明夫会頭は同日の記者会見で、ワクチンの供給問題がボトルネックとなっていることに触れ、「早くワクチン接種が進むよう、総合的な検討をお願いしたい」と政府の対応を強く求めた。
1日の定例記者会見で三村会頭は、政府がワクチンの供給問題により職域接種の申請受け付けを一時休止したことについて「政府の要請を受けて準備を進めていただけに、非常に重大な問題だ」と懸念を表明。「ワクチンの打ち手や医療従事者の確保ではなく、供給自体がボトルネックになるとは想像もしていなかった」と述べ、「ワクチン供給にネックがあるのであれば、初めから配分方法をもう少し検討すべきだった」と苦言を呈した。
三村会頭は、政府が掲げた1日100万回のワクチン接種目標が達成されたこと、医療資源を最大限効率的に活用するため、職域接種に着目したことについては高く評価。「ワクチンの接種が進み、高齢者の感染者数、重症者数、死者数は減少傾向にある。医療従事者の2回目のワクチン接種もほぼ終了している」と述べ、ボトルネックのワクチン供給が解消されれば、変異株にも、十分有効性を発揮できるとの見方を示した。その上で、「ワクチンは3種類あるので、国は最大限活用できる組み合わせを考えてほしい」と政府に強く対応を求めている。
日商の緊急要望では、各地商工会議所を通じた中小企業を集めての職域接種の速やかな承認と確実なワクチン供給により実施可能な環境を早期に整備することを求める内容。加えて、商工会議所が自治体の委託を受けて実施する中小企業の共同接種についても同様の措置を求めている。
要望の背景として、時短要請などの影響を受けて困窮している飲食店などから商工会議所に対し、早期ワクチン接種の希望が多数ある現状を強調。多くの中小企業には産業医がおらず、1社1000人以上の職域接種への参加もできないことから、「取り残されている感」を訴える声があることも指摘している。
政府は6月3日、首相官邸で、経済3団体と懇談し、菅内閣総理大臣、梶山経済産業大臣、田村厚生労働大臣、河野内閣府特命担当大臣から日商の三村会頭に対し、中小企業を集めた共同接種への協力を直接要請。これを受け、多くの商工会議所では、6月25日までに、職域接種の申請を行ったが、共同接種に使えるワクチン不足を理由に多くの商工会議所は、いまだに厚生労働省の承認が得られていない。
医師や会場などを確保して職域接種を申請した各地商工会議所では、申請した実施予定日が近づき、契約している医師や会場などの費用負担が発生し始めるところも出てきていることから、日商では、1日も早い職域接種の承認と確実なワクチン供給を政府に強く求めていくことにしている。
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