2021年版の観光白書がこのほど、閣議決定された。今回の白書では、最近の観光の動向に加え、新型コロナウイルス感染症が観光にもたらした影響を幅広い観点から分析するとともに、観光立国の実現に向けて講じようとしている施策を報告している。
白書は、「観光の動向」「新型コロナウイルス感染症を踏まえた観光の新たな展開」「令和2年度に講じた施策」「令和3年度に講じようとする施策」の4部構成。第Ⅰ部では、2020年の世界と日本の観光動向について分析し、訪日外国人旅行消費額(試算値)は7446億円(前年比84・5%減)、国内旅行消費額は10兆円(前年比54・5%減)など、19年に比べ大幅に落ち込んだことをデータで示した。
第Ⅱ部の「新型コロナウイルス感染症を踏まえた観光の新たな展開」では、新型コロナウイルス感染症がもたらした観光のトレンドの変化に関して、近隣地域内での観光(マイクロツーリズム)やワーケーションなど旅行形態の変化、〝密〟を避け時間と場所を分散する〝分散型旅行〟といった「新たな旅のスタイル」について分析。「観光業の体質強化・観光地の再生に向けた取り組みとして、宿泊施設などを含めた観光地の面的再生や新たな観光コンテンツの創出などへの取り組みを紹介している。
日本の観光の課題として、「国内旅行の宿泊日数の短さや月別旅行消費額の偏り」「宿泊業の労働生産性や賃金の低さ、入職率・離職率の高さ、非正規比率の高さ」などを指摘。観光地の魅力向上に向け、宿泊施設の改修による滞在環境上質化や経営の改善、観光地の面的再生(廃屋の撤去や泊食分離など)、収益の多角化などへの支援事例を紹介している。
観光のDX(デジタルトランスフォーメーション)化については、業務管理や接客、移動、コンテンツ、マーケティング、プロモーションなどのさまざまな場面におけるIT化やDXの導入事例を紹介。省力化、新ビジネスの展開、収益力向上、旅行者の利便性向上などの実現が可能と示唆している。
また、観光庁が実施している需要の変化を踏まえた新たな観光コンテンツ創出への支援事業、観光地域づくり法人(DMO)の感染症対策(ガイドライン・認証制度の策定)や、コロナ収束後を見据えた着地整備(受け入れ環境整備、コンテンツの充実化など)の事業なども掲載。各地域が多様なステークホルダー間の合意形成を進めながら、長期的な視野に立って持続可能な観光(サステナブルツーリズム)を実現できるように開発した「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」と、ガイドラインの指標を導入した先進5地域の取り組みも紹介している。