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コラム石垣 2021年9月1日号 神田玲子

新型コロナ感染症による医療現場の逼迫(ひっぱく)が、閾値を超えた。感染症の発生から1年半が経過した今も保健所の過重な業務量、低調なPCR検査、医療機関の脆弱(ぜいじゃく)な態勢は、改善されていないどころか深刻さを増しており、危機打開の道筋を見失ったかに映る。

▼イタリアの経済学者マリアーナ・マッツカート教授らは、今回のコロナ感染症への対応に、国による「性格」の違いが表れていると指摘する。マスクや医療用防護服の配布、ワクチンの接種方法、集中医療態勢の整備など、状況に応じて柔軟に対処できた国もあれば、そうでない国もある。変化する状況への適応力の差が、感染症への対応で浮き彫りとなった。今回のコロナ対応における政府の役割を同氏らは「ミッション」の遂行だと捉える。危機に対応するために未開の領域に積極的に投資を行い、官と民が新たな形で協働する。それは、従前の市場を監視する立場から新たな価値を市場で創造する立場へと、政府の役割を転換することを意味する。きわめて高い不確実性の中で、状況の変化に応じ、自らが実験的な試行を行う主体へと変わっていかざるを得ないためだ。

▼しかし現実は、民間企業に外注した追跡アプリのソフトですら、機能しないものが放置されたままになっていた。危機時にもかかわらず、下請け構造を見直さず、これまでの官民の役割を踏襲したことが、致命的な結果につながった。こうした失敗を繰り返さないために、政府は従前の概念を捨て、ミッションを共有し、自らがリスクを取ってダイナミックに行動する組織へと自己再生を果たさなければならない。それ以外に、この危機を乗り越える方策は残されていない。 (NIRA総合研究開発機構・神田玲子)

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