事例3 オンライン商談会に手応え これを機に努力を重ね海外取引で成果
カネタ・ツーワン(宮城県仙台市)
1953年に三陸でノリの行商から始まったカネタ・ツーワンは、地元の新鮮な素材を生かした珍味やノリ、乾物などを主力商品として製造・販売している。以前は国内市場向けのみで事業を展開していたが、海外市場に向けた展示会に出展したのをきっかけに、国外への輸出にも目を向ける。コロナ禍となってからはオンラインでの海外バイヤーとの商談に取り組み、海外からの受注につなげている。
海外市場視察に向かう直前コロナ禍で全てが中止に
「そもそものきっかけは、2年前の11月に幕張メッセで開催された〝日本の食品〟輸出EXPOという展示会に参加したことでした。それ以前はほとんど海外への輸出に目を向けていなかったのですが、仕入れ先から一緒に出展しないかとお誘いを受け、ブースを半分借りて出展しました。正直そのときは、それほど期待していませんでした」と、カネタ・ツーワンで海外市場に向けた展開を担当する商品部の菅原修さんは言う。
そのときにブースに展示したのが、同社の人気商品であるノリや瓶詰めの鮭ほぐしなどで、菅原さんたちが予想していた以上にブースを訪れたバイヤーからの反響があり、多くの問い合わせを受けた。その場で取引に結びつくことはなかったが、それ以来、同社では海外市場への商品輸出に本腰を入れて取り組むようになっていった。
「その後は、展示会のブースに来たお客さんのところに営業に回ったり、ジェトロ(日本貿易振興機構)や中小機構に海外展開について相談するようになりました。それが大きかったですね。そこで、一度は海外に行って現地を見る必要があるだろうということで、台湾に行くことにして、飛行機やホテルを手配し、現地の企業を訪問する段取りまで終えていたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大で全て中止となってしまい、一時期はテンションが下がりました。商談というのは、お客さんのところに行って、直接会ってするものだと思っていましたから」
出鼻をくじかれた同社だったが、その後、輸出EXPOを通じて知り合った業者や貿易会社を通じて、少しずつではあるが海外に商品を卸すようになっていった。
オンライン商談会への参加で海外の食品輸入卸から受注
ジェトロへの相談の中で知ったのが、ジェトロが主催する日本商品の海外ECサイトを通じた販売を目的とする「ジャパン・モール」である。2018年から始まり、世界60カ所以上の連携先ECバイヤーに商品を紹介する事業となっている。原則として国内納品・国内買い取り・円建て決済で取引が行われるため、複雑な輸出手続きが不要だ。海外取引の経験がない中小企業でも取り組みやすい仕組みになっている。
「参加申し込みをして、参加するバイヤーの中で弊社の商品を取り扱ってくれそうな会社を選んで商談希望を出すと、興味を持ってくれたバイヤーとのオンラインでの商談をジェトロがセッティングしてくれました。事前に見本の商品はジェトロに送付していて、それをバイヤーの方に送ってくれていたので、商談の前に味を知ってもらっていました」
事前にジェトロが行った、バイヤーに対する商品アピールの方法を伝えるセミナーに参加したが、試行錯誤のオンラインでの商談だった。
「パワーポイントを使って説明する形で進めました。商談時間は30分程度と決まっていたのですが、通訳を交えたので、実際に話せる時間はその半分でしたね、ただ、時間が短いので、伝えたいことだけをしっかり伝えるという意味では逆に良かったのかもしれません。商品は鮭ほぐしを中心に紹介して、骨も入っているのでカルシウムが摂(と)れ、添加物が少ないということで、健康面をアピールしました」
その場で商談がまとまるということはなかったが、商談後にメールを何度か送ると、3カ月後にマレーシアの食品輸入卸を行う企業から注文が入ってきた。
試行錯誤しながら国外に販路を拡大
その後も同社では、中小機構などが主催するオンライン商談会に参加し、海外への販路を拡大する努力を続けている。商談会では10社ほどの面談希望を出して、その半分ほどが応じてくれるという。
「商談では、どのようにしたら相手にうまくアピールできるか、毎回いろいろ考えながら準備しています。ZOOMは画面を共有できるので、製造現場やスーパーの売り場を撮影した動画を見せて、日本ではこのように製造して、このように売っていますみたいな形で出しています。その場で決まるということはないので、商談後の1、2日以内には先方にお礼のメールを送っています」
海外との取引で不安なのが商品の発送と売上金の回収だが、ジェトロのジャパン・モールにおける商談で決まった取引については、前述のように原則として国内納品・国内買い取り・円建て決済のため、そのような心配がない。
「海外への販売は、まだ大した額ではないですが、もともとなかった売り上げですし、やっていて面白いです。商談では失敗も多いですが、日本とは食べるものが違うし、流行も違うので、そういう話を聞けるのも新鮮です。それが将来的に国内向けの商品開発で役に立つこともあると思います。今は日本の製品をそのまま出しているだけですが、製造ロットが十分にあれば、海外向けの商品開発もしていきたいと思っています。あとは、コロナ禍が収束したら、海外市場も見に行きたいですね」
同社のように、中小機構やジェトロといった公共機関が主催するオンライン商談会を利用すれば、大きな費用をかけず、海外に行くこともなく、英語が話せなくても、海外への販路拡大も可能になってくるのである。
会社データ
社名:株式会社カネタ・ツーワン
所在地:宮城県仙台市若林区卸町3-8-1
電話:022-782-0881
HP:https://www.kaneta-group.co.jp/
代表者:田畑正人 代表取締役社長
従業員:約100人
【仙台商工会議所】
※月刊石垣2021年9月号に掲載された記事です。
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