政府は2021年12月24日、2022年度予算案を閣議決定した。当初予算案に盛り込まれた中小企業関係予算は前年度を上回る1118億円。政府は当初予算に21年度補正予算の3兆9593億円を合わせ、「16カ月予算」として中小企業・小規模事業者に切れ目ない支援を行う。
22年度の中小企業対策費は、コロナ禍の影響で厳しい状況にある事業者支援に重点が置かれた。事業復活支援金の給付などで支援するほか、「事業再構築・承継・再生を目指す事業者の後押し」「生産性向上による成長促進」「取引環境の改善を始めとする事業環境整備」などの分野についても中小企業の挑戦を後押しする。
補正予算に盛り込まれた「事業復活支援金」は、21年11月~22年3月のいずれかの月の売り上げが、前年または2年前の同じ月より30%以上減った中堅・中小・小規模事業者、フリーランス、個人事業者に対し、最大で250万円を支給するもの。新規事業分野への進出などの新分野展開、業態転換、事業再編などに取り組む中小企業を支援する「事業再構築補助金」など自己改革に取り組む中小企業への支援も盛り込まれている。
基本的な課題認識と対応の方向性
◆コロナ禍の影響により厳しい業況にある中小企業・小規模事業者などに事業復活支援金を給付するとともに、資金繰りなど必要な支援に引き続き万全を期す。
◆コロナ禍の影響を乗り越え、中小企業・小規模事業者などの雇用・技術といった経営資源を生かした事業価値の向上を実現するため、事業者に細やかに寄り添いながら、事業再構築、承継・再生、生産性向上を支援する。併せて、取引適正化対策を強化し、前向きな投資や賃上げが可能となる環境を整備する。
◆加えて、「災害からの復旧・復興、事前の備え(強じん化)」にしっかり取り組んでいく。
1 感染症の影響により厳しい状況にある方々の事業や生活・暮らしの支援
◆22年3月までの見通しを立てられるよう、コロナ禍で大きな影響を受ける中堅・中小・小規模事業者、フリーランスを含む個人事業主に、地域、業種を限定しない形で、事業規模に応じて事業復活支援金を支給する。また、長期化するコロナ禍の影響により厳しい業況にある中小企業・小規模事業者などが足元で必要とする資金繰りなど必要な支援に引き続き万全を期す。
補正 事業復活支援金【2兆8031・7億円】
・コロナ禍で2021年11月~22年3月のいずれかの月の売上高が30%以上減少した事業者に対し、地域・業種問わず、売上高減少率を基準に個人事業主は30万~50万円、法人は60万~250万円を5カ月分の固定費負担の支援として一括給付。
補正 日本政策金融公庫を通じた資金繰り支援【1403・0億円】
・一時的に財務状況が悪化した中小企業・小規模事業者などに資本制ローンを供給
2 事業再構築・承継・再生を目指す事業者の後押し
◆新分野展開や業態転換などの果敢な取り組みを支援する事業再構築補助金(20年度3次補正1兆1485億円)を積み増し、新たにグリーン成長枠を設け、売上高減少要件を撤廃するなど、中小事業者などの新たな挑戦を強力に支援するとともに、事業承継・引継ぎ・再生を推し進める。
補正 事業再構築補助金【6123・0億円】
・コロナの影響を大きく受けながらも、新分野展開、業態転換などの「事業再構築」に挑戦する中小企業などを支援。
補正 中小企業向け事業再編・再生支援事業【757・4億円】
・事業再編・再生支援を促進する官民連携ファンドの拡充などを実施。
当初 ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業【10・2億円(新規)】
・複数の中小企業などが連携して行う、新たな付加価値創造を図る製品・サービス開発や、「事業再構築」などの取り組みを支援。
当初 中小企業再生支援・事業承継総合支援事業【157・7億円】
・中小企業再生支援協議会や事業承継・引継ぎ支援センターを通じて、中小企業の円滑な再生・事業承継を総合的に支援。
当初 事業承継・引継ぎ支援事業【16・3億円】
・事業承継・引継ぎ(M&A)に伴う設備投資などの取り組みや、引継ぎ(M&A)時の専門家活用費などを支援。
税 土地(商業地等)に係る固定資産税の経済状況に応じた措置
・課税額が上昇する土地について、税額上昇分を半減する措置を講じ、税負担の増加を緩和。
税 法人版事業承継税制における特例承継計画の提出期限を1年延長
3 生産性向上による成長促進
◆コロナの影響の長期化への対応や賃上げ原資の確保などのため、生産性革命補助金を通じ、設備投資・販路開拓・IT導入などを促進する。グリーン・デジタル分野に挑む事業者に対し、新たに「中小企業グリーン・デジタル投資加速化パッケージ」として特別枠を設けて設備投資などを支援する。引き続き、研究開発促進・海外進出支援・DXなども含め、生産性の向上を図っていく。
補正 中小企業生産性革命推進事業【2000・6億円】
・設備投資、販路開拓、ITの導入などを補助するなど、中小企業などの生産性向上に資する継続的な支援を実施。
補正 デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業【12・4億円】
・越境EC市場の獲得促進のため、中小企業の行う海外向けブランディング・プロモーションなどを支援。
当初 成長型中小企業等研究開発支援事業(旧:サポイン事業)【104・9億円】
・中小企業が大学などと連携して行う、研究開発やAI/IoTなどの先端技術を用いた革新的なサービスモデル開発などの取り組みを支援。
当初 海外展開のための支援事業者活用促進事業(JAPANブランド育成等支援事業など)【5・5億円】
・海外市場の獲得に取り組む中小企業に対し、新商品・サービス開発や展示会出展などを支援。
税 企業の賃上げを促進する税制措置の抜本強化(賃上げ促進税制)
・雇用者全体の給与や教育訓練費を増加させた中小企業が雇用者全体の給与の増加額の最大40%税額控除可能。
税 交際費課税および少額償却資産の特例措置の延長
・販路開拓などの支援のため交際費課税の特例を延長。事務負担軽減などのため少額償却資産特例を延長。
4 取引環境の改善をはじめとする事業環境整備など
◆賃上げが可能な環境の整備にも寄与する「生み出した価値を中小企業・小規模事業者に着実に残す」ため、下請Gメン倍増などの体制強化を実施し、取引環境の改善を図る。加えて、よろず支援拠点・中小企業支援機関による経営相談体制の強化や伴走支援の実施など、中小企業・小規模事業者を取り巻く事業環境の整備を図っていく。
補正 事業環境変化対応型支援事業【130・4億円】
・課題設定型の伴走支援を全国展開するほか、最低賃金引き上げやインボイス制度導入への対応が求められる中小企業に対し、制度の周知やデジタル化支援・相談などを実施。
補正 取引適正化等推進事業【8・0億円】
・中小企業向けに、取引価格交渉ノウハウに関するセミナーなどを開催し、価格交渉力の強化を支援。
当初 中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【40・0億円】
・各都道府県によろず支援拠点を整備し、中小企業・小規模事業者が抱えるさまざまな経営課題に対応するための体制を整備。
当初 小規模事業対策推進等事業【53・3億円】
・中小企業支援機関などを通じて行われる小規模事業者への巡回指導・窓口相談などを支援。
当初 中小企業取引対策事業【8・5億円】
・下請Gメン倍増などの体制強化(下請代金支払遅延等防止法)などを通じた下請法の厳正な執行、下請かけこみ寺による相談対応などを実施。
当初 地域の持続的発展のための中小商業者などの機能活性化事業【4・6億円】
・地方公共団体と連携し、中小商業者などが新たな需要を創出するために行う調査分析(ソフト事業)・施設整備などを支援。
当初 中小企業・小規模事業者人材対策事業【8・4億円】
・中小企業の経営課題に即した人材確保を支援するとともに、海外展開を担う人材などの育成を支援。
当初 地方公共団体による小規模事業者支援推進事業【10・9億円】
・地方公共団体と連携し、地域の実情に応じた小規模事業者の経営改善のための支援を実施。
5 安全・安心を確保した社会経済活動の再開
既存予算で対応 がんばろう!商店街事業【20年度第3次補正:30・0億円】
6 災害からの復旧・復興
補正 地方公共団体による地域企業再建支援事業など【130・4億円】
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