観光の由来が国の光を観る(観国之光)ことであるとすれば、その国の光とは何か。もちろん、それは時代や国(地域)によって異なるであろう。
▼近代は鉱工業を軸とした産業で幕を開けた。世界で最も早く産業革命を果たした英国が19世紀半ばに開催した「ロンドン万博」は、鉄とガラスという当時の最先端材料を駆使したパビリオンを世界に誇った。これはまさに英国の国の光、観光である。
▼昨年末、東京・一橋講堂で教育旅行に関するシンポジウムが開催された。日本修学旅行協会の主催だが、テーマは産業観光をどのように教育旅行に生かすかというものであった。
▼教育旅行のテーマは、極めて多様化している。近年はものづくりの現場である工場や工房を訪ねるケースが増加している。また名古屋の産業技術記念館や各地の鉄道博物館など産業系のミュージアムなども人気が高い。
▼子どもたちが、ものづくりと産業の歴史を学ぶことは誠に意義深い。しかし、教育において大切なことは、子どもたちの自主的な学びである。そのためには、先生方による日頃からの指導が重要である。
▼少し前に、沖縄県石垣市の教育委員会主催で、中学生が「沖縄の観光を考える」というフォーラムを開いた。石垣島全島の中学3年生約380人が参加。子どもたちは、沖縄の産業や環境を日ごろから学んでいる。発表した子どもの1人は、「大人たちは沖縄を壊している」と指摘した。沖縄最大の産業である観光が、自然・生態を壊している、という指摘である。
▼大人たちは、これにどう応えるのか。教育旅行とは、単に子どもたちへの一方的なメッセージではなく、大人たちとの対話の機会が必要である。 (観光未来プランナー・日本観光振興協会総合研究所顧問・丁野朗)
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