日本商工会議所の三村明夫会頭は1月24日、東日本大震災沿岸部被災地区商工会議所連絡会とのオンライン形式の懇談会に出席し、被災地の復興に向けて意見交換を行った。会合には、日商の三村会頭、鎌田宏副会頭(東北六県商工会議所連合会会長、仙台商工会議所会頭)、連絡会の花坂康太郎代表(宮古商工会議所会頭)らメンバーの商工会議所会頭、県連会長などが出席。円滑かつ着実な復興・創生の実現に向けて、取り組むべき事項などを討議した。
会合で、三村会頭は、3月で東日本大震災から11年目を迎えることに触れ、「『創造的復興』に本格的に取り組む段階に入りつつある」と指摘。2021年12月の「復興道路・復興支援道路」の全線開通を「象徴的な出来事」と表現し、「約10年間で、総延長570キロメートルにも及ぶ道路が整備されたことは、関係者が精力的な要望活動に取り組まれた成果だ」と述べた。
東北地域の復興について、「震災復興事業による建設業の拡大に加え、自動車や半導体関連企業など製造業の立地により、域内GDPは震災前の水準を超えるところまで増加した」と指摘。福島イノベーション・コースト構想の中核を担う「国際教育研究拠点」など、国家レベルの大型プロジェクトが東北に集まりつつあることについては、「『創造的復興』の柱となる」と期待を表明した。
一方で、沿岸部の主力産業である水産加工業については、不漁による原材料不足に加え、「来年春に予定されているALPS処理水の放出に伴う風評被害が強く懸念される」と指摘。政府の適切な対応とともに、「東アジア諸国における日本の水産品に対する輸入規制の撤廃についても粘り強く対応するよう求めていく」との考えを示した。
また、創造的復興のけん引役として、観光産業の重要性を指摘。「日商としても、国に対し、コロナ禍で大きなダメージを受けた観光産業の再生、地域資源を活用した観光地のさらなる魅力向上・高付加価値化を後押しする支援策の拡充を求めていく」と述べた。
連絡会の花坂代表は、被災地域の実態として、「頻発する自然災害や主要魚種の漁獲量の極端な減少、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化、原油高・原材料高により、いまだ事業の先行きが見通せない状況にある」と指摘。会合に出席した連絡会の15商工会議所、各県の商工会議所連合会の代表と共に、各地の実情を踏まえた要望事項を説明し、日商が取りまとめる要望書に盛り込むことを要請した。
東北六県商工会議所連合会の鎌田会長も連合会としての要望書を日商に提出。東日本大震災からの復興について、第2期復興・創生期間内の着実かつ加速的対応、東北経済の復興・再生への強力な推進に向けた支援策の拡充などを求めている。
両団体の意見を聞いた三村会頭は、3月にも日商として取りまとめる国への要望書に反映させることを明言。復興庁はじめ関係各方面に実現を強く働き掛けていく考えを表明した。
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