山々に囲まれた飛騨の食は、朴(ほう)葉みそや漬物ステーキなど独特な郷土料理が多い。ほかの地にはない魅力的な里料理が勢ぞろいする。「こもとうふ」はその一つで、内側に無数の気泡がある(〝す〟が立った)豆腐。少しざらりとして固めの食感、しっかりした大豆の香りが新鮮だ。この気泡こそこもとうふの特徴で、味を染みやすくし、日持ちをよくするための工夫とか。飛騨の先人の知恵である。
木綿豆腐を簀(す)の子で巻き、100度以上の高温の湯でゆで上げて冷水で締めて完成。調理法は煮る、焼く。冷ややっこには向いていない。肉豆腐にしたり、豆腐ステーキで食べたり好みでどうぞ。「味付こもとうふ」はすでにしょうゆベースのだしに漬け込まれており、温めてそのまま食べられる。酒のつまみに最高だ。
これらのほかに、ゴボウ、ひじき、ニンジン、黒ごま、青えんどう豆を豆腐に混ぜ合わせゆばで巻いて蒸した「ゆば巻とうふ」や、湯通しした豆腐を搾って味付けし、銅板鍋でじっくり両面を焼いた「ぎせい焼とうふ」もあり、飛騨ならではの豆腐いろいろを食べ比べるのも楽しい。4月14、15日には春の高山祭が開催される。祭り囃子(ばやし)を聴きながら、こもとうふで一献、風情を楽しみたい。
Data
社名:株式会社古川屋(ふるかわや)
所在地:岐阜県高山市冬頭町42
電話:0577-32-1262
【高山商工会議所】
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