和歌山YEGは、2019年に「シフト20億円!BUY LOCALで地域内経済循環を活性化しよう!」と題する提言書を和歌山市に提出した。その後も「ローカルファースト」をテーマに、大規模な買い物イベントの実施、小学校での総合学習授業への参画、講演会やシンポジウムの開催など、地元の経済を盛り上げるために精力的に活動を行う和歌山YEGの取り組みについて取材した。
きっかけは和歌山市への提言活動
和歌山YEGは、2018年に提言を担当する委員会を設置し、「地域内経済循環の活性化」というキーワードをテーマに掲げ、自らもアクションする活動をスタート。その取り組みを担当した、副会長の久保田善文さんに伺った。
「地域経済について調査研究を進めていく中で、大規模量販店の進出やネット通販の増加により地方経済が衰退している。それを解決する一つの方法が、地域での買い物を推奨するBUY LOCAL運動との考え方にたどり着きました」
その後、提言書としてまとめたものを19年に市長へ手交し、具体的なアクションへと移っていく。
20億円の地元消費を生み出す
取り組みを市民へ周知するために、同YEGが打ち出したBUY LOCAL運動の合言葉は「シフト20億円」というもの。
「これは、約40万人の和歌山市民一人一人が月に500円を地元消費に切り替えることで生まれる消費移動のことです。ワンコインというキャッチーさも、伝わりやすさの効果を狙っています」
次いで20年11月には「LOVE和歌山9DAYS~地元で買って食べて商談しよう!9日間チャレンジ!!~」と題した事業を実施。茅ヶ崎商工会議所会頭であり、ローカルファースト財団理事長でもある亀井信幸さんを招き「ローカルファーストは地域経済を飛躍的にUPさせる」と題した講演会を開催し、取り組みへの理解を深めた後、9日間にわたる地域内での買い物を促進するイベントを実施。親会の会員事業所も合わせ134店舗が参加し、インパクトのある事業となった。
「利用しやすい飲食店などでの消費だけではなく、ビジネスマッチングの要素も取り入れたことで、会員企業間でのつながりが促進されました」
バイローカルからローカルファーストへ
22年1月には、同YEG 15周年記念シンポジウムを「ローカルファーストが未来をつくる」と題して開催。和歌山大学の足立基浩副学長による同タイトルをテーマとした記念講演や、これまでのYEGの取り組みを紹介した。その中には地元小学校での授業の様子もあり、取り組みを学んだ子どもたちからは、「10回に1回は地元で買い物をしよう」「コロナ禍で大変な今だからこそバイローカルが必要」などの声が聞かれ、さらにはこの考え方を地域に広げたいと、BUY LOCALと書かれたステッカーやポスターを、子どもたち自らが地元のお店へ掲示のお願いに行く場面もあった。
「『地元を大事に』『地元をもっと好きになろう』をテーマとした総合学習の授業を通じて、地域や地元のお店を大切にしたいという思いが子どもたちにも芽生えてくれていると思います」
持続可能で豊かな地域社会の実現を目指す
さまざまな取り組みと並行して、同YEGは中期ビジョンを21年に策定した。そこにはローカルファーストを推進することが明記されており、今後も活動の柱とする意志が見て取れる。
「地域の皆さまには、まずは地元での買い物を切り口に、ローカルファーストの考え方や、ライフスタイルを身に付けてもらえれば。地元での豊かな暮らし、住み続けられるまちづくりを、産官学民のパートナシップを活性化させることで実現していきたい」と、久保田さんは力強く語ってくれた。
【和歌山商工会議所青年部】
会長:津村 周
設立:2006年
会員数:198名
YEG CONNECT
PROFILE
全国各地で地域の未来のために励むYEGメンバーを紹介するコーナー。5月号は田辺YEGの中川雅也さん。2016年の会社設立後、仕事にYEG活動に圧倒的な存在感を見せる中川さんに伺いました。
―安定した職から起業されたきっかけを教えてください。
結婚と妻の出産を経て、子どもたちとの時間をもっとつくりたいと思ったときに、前職は残業も多く、休みもなかなか取れなかったので、自分で会社をつくってしまおう、と思ったんです。
―そこからグッドデザイン賞受賞につながっているのですね。
21年度に働き方の改革で受賞しました。フレックスでの6時間勤務や自由出勤制など、子どもがいる従業員が働きやすい環境が評価されました。現場作業を軽減するドローンの開発もポイントになったと思います。20年度には育林事業で受賞しています。
―木を切らない林業ですね。
林業従事者は年々減少し、山林の多くは植栽されないまま放置されています。しかし、森林には治水効果や土砂流出の防止といった防災機能、大気や地球環境の保全といった機能があります。そこで、弊社では育林業に特化したサービス、苗の生産や植栽、管理を行っています。また、どんぐり拾いから苗の育成、植林体験など教育事業にも力を入れ、山林所有者に山への関心を高めてもらい、里山が豊かになることで、害獣対策や、さまざまなSDGsにも貢献できると思っています。
―YEGメンバーとも協同していますね。
メンバーが耕作放棄地などで苗木をつくり、それを弊社が植栽。売り上げの一部を山へ寄付する熊野の森を再生するプロジェクトや、食害を受けた紀州材を家具として販売する連携を行っています。
―最後に今後の目標をお聞かせください。
50歳からは、魚を取らない漁業に挑戦したいですね。
取材 ・ 写真撮影:日本商工会議所青年部(日本YEG) 広報ブランディング委員会
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