私は茨城県の水戸で生まれ育ちました。水戸といえば「水戸黄門」「水戸納豆」、日本三名園の一つ「偕楽園」、藩校「弘道館」などが有名です。昨年度、2023年度の全国商工会議所観光振興大会(24年2月21~23日)の当地での開催を決定いただきました。オペラも上演できる新市民会館の開館に合わせて準備に余念がありません。
しかし、それらのハード面より、私のふるさと自慢は水戸の人々の気質であり、気風です。水戸は人口27万人の県庁所在地ですが、いわゆる水戸藩に含まれた領地(周辺市町村)を合わせると70万人ほどの人が住んでいます。水戸藩の気質はほぼ共通しており、「水戸っぽ」「三ぽい」といわれます。いわゆる「理屈っぽい」「怒りっぽい」「飽きっぽい」であります(最後の「飽きっぽい」は花街では「惚(ほ)れっぽい」などという説もあります)。
まず、「理屈っぽい」気風ですが、ともかく水戸の人は理屈好きで頑固です。これは『大日本史』を編さんするにあたり、徳川光圀公が彰考館という学問所をつくり、多くの学者を招聘(しょうへい)、育成してきたことに由来するともいわれます。人の付き合いでは(悪くいえば)筋を通さないととにかく面倒! だからやせ我慢が大変? しかし腹蔵ないので、理が通れば付き合いは誠に単純で楽しいものです。
「怒りっぽい」とは直情径行ということです。「義」に反したことは許さないという気構えがあり、これまた光圀公が信奉した朱子学の影響ともいわれます。「知行一致」の精神は義憤にかられるとどこまでも攻撃的で、幕末には「桜田門外の変」「坂下門外の変」、昭和には「5・15事件」など水戸浪士や水戸人が絡んだ事件は多いのです。まあ良くいえば水戸の人は正義感が強く、二言はないので頼りになります。
「飽きっぽい」とか「惚れっぽい」のは人が単純で実直であるということでしょう。水戸では「都の人は何を考えているか分からない。本音と建前がある」などといいますが、言葉を換えれば、水戸の人は複雑で洗練された人付き合いができないということかもしれません。よって(その気質のためか?)水戸から首相は一人も出ていません。
ともあれ、狭い日本といえどもそれぞれの地方のこうした気風は、一つの財産だと思います。この気質の多様性はこれからも日本の折々の危機を越える知恵を出してくれると思うのです。幕末に、伝統の旧弊の壁に対し展開が拓(ひら)けなかったところを、愚直な人たちのエネルギーが限界突破させたように。
誤解のなきよう、水戸は安全で楽しいまちです。24年2月、「全国商工会議所観光振興大会2024in水戸」にこぞってお越しくださいませ。
最新号を紙面で読める!