日本商工会議所の三村明夫会頭は、7月6日の定例記者会見で、6月末に電力需給がひっ迫する状況になるなど不安定な電力システムの在り方などについての質問に対し、太陽光など自然エネルギーのバックアップ電源として「原子力発電の活用は必要」との考えを改めて示した。「安全が確認された原発は早く稼働してほしいし、安全性の審査も迅速化すべき。同時に省エネを追求することも絶対に必要だ」と強調。冬の電力不足を回避するために需給両面の対策の必要性を訴えた。
三村会頭は、6月末に電力需給がひっ迫したことについて、「最悪期は脱したので良かった」とした上で、火力発電所の点検時期である6月に重なったことに加え、構造的な問題として、カーボンニュートラルを追求する中、石炭への投資が進まない状況にあることから、需給がタイトになり、石炭価格が高騰している点に言及。「価格が上がれば、石炭火力発電の収益が悪化し、ますます火力発電の稼働が難しくなる」との見方を示した。
また、太陽光発電が天候や時間帯によって発電量が増減する点に触れ、本来、原子力発電や火力発電が担うバックアップ体制の現状について、「非常に脆弱(ぜいじゃく)」と懸念を表明。「ベース電源の代表である原子力発電の活用は必要」と述べ、「安全が確認された原子力発電所の早期稼働と安全性の審査も迅速化すべき」との考えを示した。
同時に省エネ対策の重要性も強調。「発電能力は短期的には上がらないため、今冬の電力不足を回避するためには、政府・国民・企業が一丸となって節電に努力すべきだ」と述べた。
政府がスタートアップ企業への支援強化に向け担当大臣を置くとする一部報道については、「(報道は)承知している。スタートアップ企業を日本全体としてバックアップする方向に進むことは絶対に必要である。大いに期待している」との考えを表明。スタートアップ企業への投資促進については、「日本では投資拡大の余地がある。そのための仕組みづくりが必要だ」と述べた。
また、起業時の入口だけでなく生産規模を拡大する段階など出口における支援や経営者保証の見直しの必要性を指摘。「今後、経営者保証ガイドラインの適切な運用やスタートアップ企業に対するさまざまな支援制度などにより、経営者に過度な負担を負わせないような環境にしていくことが必要」との考えを示した。
2022年度の最低賃金については、「第1回の中央最低賃金審議会の冒頭で、後藤厚生労働大臣から『初めから結論ありきではなく、生計費、賃金、賃金支払い能力を考慮し、客観的で納得できる結論を導いてほしい』という発言があった」と指摘。「この発言はわれわれの要望に沿うものであり歓迎したい」と述べた。
一方で、昨年度の最低賃金が「骨太の方針」に記載された政府方針を追認する形で、全国加重平均28円の大幅な引き上げとなった点に触れ、「中央・地方の最低賃金審議会も政府方針ありきで議論が進み、各地の商工会議所からは、1年近くたった今もなお、最低賃金の決定プロセスに対する疑問の声、最低賃金審議会の形骸化を指摘する声が非常に多い」と強調。「今年は最低賃金法第9条に定める三要素に基づき、各種指標・データによる明確な根拠のもと、公労使での十分な審議を経て、納得感のある水準が決定されることを強く期待したい。まずは中央の審議会でしっかり議論し、地方の審議の参考となる内容を導き出してほしい」と述べた。
経団連と韓国の全国経済人連合会(全経連)の会合再開など、日韓経済交流の復活の動きについては、「結構なことだ」と述べる一方で、両国関係について「徴用工問題などまだ解決していないことがある」と指摘。「政治的に難しい問題はあるが、経済界としては、自由な話し合いの下で交流を深めること自体には意味がある」との考えを示した。
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