厚生労働省は7月15日、「これからの労働時間制度に関する検討会」(荒木尚志座長・東京大学大学院教授)が取りまとめた報告書を公表した。報告書では、労働時間制度に関するこれまでの経緯と経済社会の変化を踏まえ、これからの労働時間制度に関する基本的な考え方や各種労働時間制度の現状と課題を提示。裁量労働制については、「対象業務」「制度の適用と裁量の確保」「労働者の健康と処遇の確保」「適正な制度運用の確保」などについて対応の方向性を示した。
報告書では、少子高齢化や産業構造の変化が進む中で、デジタル化のさらなる加速や、新型コロナウイルス感染症の影響による生活・行動様式の変容が、労働者の意識や働き方、企業が求める人材像にも影響していることなどを指摘。今後、企業間の人材の獲得競争激化が予想される中で、多様な働き方を求める多様な人材の労働市場への参画を可能とすることやデジタル化の進展に対応できる人材のニーズが高まるとの見方を示し、企業に対しては、「企業の求める能力を持った多様な人材が活躍できるような魅力ある人事労務制度を整備していくことが求められる」と強調した。
これからの労働時間制度については、労使のニーズや社会的要請に対応しているかどうか常に検証するとともに、「まずは各種労働時間制度の趣旨の理解を労使に浸透させる必要がある」と指摘。その上で、「どのような労働時間制度を採用するにしても、労働者の健康確保が確実に行われることを土台としていくこと」「労使双方の多様なニーズに応じた働き方を実現できるようにすること」「労使当事者が十分に協議した上で、その企業や職場、職務内容にふさわしい制度を選択、運用できるようにすること」などの視点を示した。
裁量労働制については、適用労働者の制度適用への不満は少ないことや(図参照)、制度適用により労働時間が著しく長くなる、処遇が低くなる、健康状態が悪化するとはいえないという結果が出ていることなどを踏まえ、「現行制度の下での対象業務の明確化などによる対応」「労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保」「労働者の健康と処遇の確保」「労使コミュニケーションの促進などを通じた適正な制度運用の確保」などの対応の方向性を提示。可能なものは、速やかに実施するべきとの考えを示している。
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