東京商工会議所は7月15日、「創業・スタートアップ実態調査」報告書を取りまとめ、公表した。調査結果を見ると、事業の規模・成長に対する考え方では、「規模を拡大し成長を目指す」企業が最も多い一方、急激な成長を目指すスタートアップや社会課題解決・社会福祉を重視する企業も一定数存在。同所では、創業の目的・動機が多様化している実態などを踏まえ、今後の政策提言活動に生かしていくほか、起業・創業の促進や、創業後の事業継続・成果創出の後押しなどにも取り組む考えを示している。
調査結果では、事業の規模や成長に対する考え方について、「規模を拡大し成長を目指す(小規模から中規模以上へ)」企業が44・5%で最多。次いで「規模を拡大せず成長を目指す(規模維持)」(35・3%)、「成長・拡大よりも社会課題解決、社会福祉を重視」(9・9%)、「急激な成長を目指す(スタートアップ)」(9・0%)の順で多くなっており、創業することの目的・動機が多様化する結果となっている。
40歳未満から50歳代までは「規模の拡大を目指す」と考える経営者が多く、年代が上がるにつれて、規模の拡大を目指すと答える経営者が減少。規模の拡大を目指す企業のうち、17%は株式公開を目指している一方、現状維持・規模拡大を目指さない企業の9割以上は現経営者が上場せず事業継続を目指している。
経営者の年齢別にみた収益状況では、年代が上がるにつれて、黒字企業が減少、赤字企業が増加する傾向。また、60 ・ 70歳代以上の経営者と比較し、40歳未満 ・ 40歳代の経営者では現在の状況について「とても順調・概ね順調」の回答が多くなる結果となっている。
創業検討時期、創業した動機についての調査結果では、学生時代に創業を考え始めたのは10・4%にとどまっていることから、同所では、「今後、起業・創業を増やす上で、学生時代からのアントレプレナーシップ(起業家精神)の醸成が必要だと考えられる」と分析。また、創業した動機のうち「定年後も働きたかった」との回答について、「50歳未満」と「50歳代以上」を比較すると約3倍の開きがあることから、「人生100年時代を迎える今後、会社員として身に付けたスキルを生かした定年後の起業・創業が今後増えていくと予想される」との見方を示している。
ソーシャルビジネスで創業した企業の現状については、他の領域で創業した企業と比較して、収益を上げることに苦戦する企業が多い結果となった。創業当初の見通しと比較した現在の状況についても「とても順調・概ね順調」の回答が少なく、困難な事業運営をしている企業が多いことがうかがえる。
事業拡大に向け希望する支援策については、「補助金・助成金、融資制度の充実」が最多で68・0%。続いて「販路開拓支援」(50・3%)、「支援策や制度の情報提供」(27・2%)、「人材採用支援」(26・8%)、「専門家による経営支援」(24・3%)、「連携企業・研究機関とのマッチング」(19・9%)の順で多く、直面している課題に対応した支援策が上位となった。
新型コロナウイルス感染症拡大後の新たな取り組みについては、「新たな取り組みを開始または既存の取り組みを強化した」と回答した企業は88・8%。イノベーション活動における連携相手の有無については、86・7%の企業で他社・他機関と連携しているとの回答があった。
調査期間は、2022年2月17~3月4日。調査対象は、業歴10年未満の東京都内中小企業事業者1万2千社で回答数は1148社(回答率9・6%)。報告書では、調査結果のほか「スタートアップ企業×DX領域」「再チャレンジ企業」など背景の異なる6社の創業に関する事例も盛り込んでいる。
最新号を紙面で読める!