政府は7月27日、首相官邸で第1回「GX実行会議」(議長・岸田文雄首相)を開催した。会議は、化石燃料中心の経済・社会構造、システム全体をクリーンエネルギー中心に移行させるGX(グリーントランスフォーメーション)の実行に向け、必要な施策を検討するために設置したもの。会議に出席した日本商工会議所の小林健特別顧問は、5月に日商が公表した「クリーンエネルギー戦略に対する意見」に触れ、「原発の早期再稼働など、移行期におけるエネルギー安定供給の視点も重要」と述べた。
小林特別顧問は、「エネルギー安全保障と量・価格両面での安定供給を図りつつ、カーボンニュートラルへの挑戦を加速し、わが国経済の長期停滞からの脱出と新たな成長のエンジンとしていくことができるかどうかは、わが国の行く末を左右する課題」と述べ、GX実行会議への期待を表明。原油・LNGの供給不安、価格高騰が続く中で、「原油・LNGの安定供給確保に加え、原子力発電の位置付け明確化と早期再稼働など、移行期におけるエネルギー安定供給の視点も重要」と指摘した。
今後10年のロードマップで示した「新たな5つの政策イニシアティブ」のうち、「GX経済移行債」については、欧米に劣後しない規模とともに「投資の予見可能性を高めるには、中小企業にも分かりやすいように、カーボンニュートラルを通じて目指す経済社会の全体像とそこに至る道筋、必要となるコストを示すことが必要」と指摘。「規制と支援の一体型投資促進」については、「経営資源が十分でない中小企業については、自主的な取り組みを促すインセンティブ手法に軸足を置いてほしい」と要望した。
「GXリーグ」については、カーボンニュートラル関連技術の開発・実装・普及をリードしていくものと評価する一方で、大企業から取引先中小企業に対する「押し付け」的な温室効果ガス排出削減要請がなされることへの懸念を表明。リーグ参加企業をはじめ、大企業と中小企業の協力・連携、サプライチェーン全体での取り組みを推進する政策の検討が必要との見方を示した。
会議に出席した岸田文雄首相は、「危機の克服とGXの実行を一体的に捉えた議論を行い、緊急性に照らして順次、政策を提言してもらいたい」と指示。次回以降の会議において、今後数年間の電力やガスの安定供給に向け、原発の再稼働とその先の展開策など政治の決断が必要な具体的な方策についても明示するよう求めた。
また、足元の危機克服をGX実行に向けた10年のロードマップの第一段階と位置付けることを国民に示すこと、ロードマップにおける5つの政策イニシアティブの具体化の検討を要請。「GXの実行は、新しい資本主義実現のための最重要の柱の一つ。政府が呼び水を用意し、官民の投資を集めることで、中長期の脱炭素という課題をわが国の成長エンジンへと転換し、持続可能な経済をつくっていきたい」と述べた。
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