経済産業省は8月31日、2023年度予算概算要求・税制改正要望を発表した。中小企業対策費は1343億円を要求。22年度当初予算(1095億円)に248億円を上積みした。
基本的な課題認識と対応の方向性として、「厳しい経営環境に置かれている中小企業・小規模事業者などに対する資金繰り支援や価格転嫁対策などに万全を期す」ことを強調。その上で、「成長志向の中小企業・小規模事業者の創出」に向け、挑戦・自己変革を後押しするための予算・税などの政策措置を総動員する考えを示した。
資金繰り支援などを通じて、事業継続を強力に支援するとともに、「転嫁円滑化施策パッケージ」の着実な実施により価格転嫁・取引適正化を実現し、持続的な賃上げの原資となる収益を確保。創業・事業承継を契機に新たな取り組みに挑戦する自己変革への意欲が高い企業への支援も強化する。
また、創業時の借入時における経営者保証を不要とする保証制度を創設するほか、中小企業・小規模事業者の後継者同士のネットワークの創出、創業・事業承継を円滑に実施するための環境を整備する。
「デジタル化・生産性向上」「海外展開・新分野開拓・事業再構築」「研究開発」など成長分野などへの挑戦に向けた投資を促進するとともに、地域活性化に向け、地方自治体などと連携し、地域課題の解決に取り組む事業者を支援。また、経営力再構築伴走型支援モデルなどの活用による経営支援を強化、企業における人材育成やマッチングもサポートする。
基本的な課題認識と対応の方向性
・ コロナ禍の長期化、急速な円安の進行、原材料・エネルギー価格などの高騰により厳しい経営環境に置かれている中小企業・小規模事業者などに対する資金繰り支援や価格転嫁対策などに万全を期す。
・ その上で、激変する産業構造の中で「成長と分配の好循環」を実現するために必要不可欠な「成長志向の中小企業・小規模事業者」の創出に向け、挑戦・自己変革を後押しするための予算・税など政策措置を総動員する。また、自治体と連携した、地域経済をけん引し、地域課題を解決する企業の取り組みを加速化する。
※長期化するコロナ禍などの環境下にある中小企業などに必要な支援について事項要求
※ 【 】 内は23年度概算要求額、( )内は22年度予算額
1.コロナ長期化・原材料価格高騰などの危機への対応
〈資金繰り支援〉
(1)日本政策金融公庫補給金 【151・1億円(145・5億円)】
・ 日本政策金融公庫からの融資における金利を引き下げるため、利子補給を実施
(2)中小企業信用補完制度関連補助・出資事業 【67・7億円(49・8億円)】
・ 信用保証制度などを通じた資金繰り支援を実施。経営者保証なしのスタートアップ向け債務保証メニューを新設
〈価格転嫁対策〉
(3)中小企業取引対策事業 【27・9億円(21・3億円)】
・ 価格交渉促進月間(9月、3月)の実施や、下請振興法に基づく「指導・助言」、下請Gメンなどによる取引実態の把握、「パートナーシップ構築宣言」の参加企業数の増加、下請法の厳正な執行、下請かけこみ寺での相談対応などを実施
2.創業・事業承継を通じた挑戦・自己変革の推進
(1)アトツギベンチャー創出加速化事業 【4・0億円(新規)】
・ アトツギ同士の切磋琢磨(せっさたくま)できる場を創出し、家業を生かした新規事業アイデアを競うイベント(アトツギ甲子園)を開催
(2)中小企業活性化・事業承継総合支援事業 【225・0億円(157・7億円)】
・ 中小企業活性化協議会による事業再生支援、事業承継・引継ぎ支援センターによる円滑な事業承継・引継ぎ支援などを実施
(3)事業承継・引継ぎ支援事業 【20・0億円(16・3億円)】
・ 事業承継・引き継ぎ(M&A)後の経営革新やM&A時の専門家活用、事業承継・M&Aに伴う廃業に係る費用などを支援
3.成長分野などへの挑戦に向けた投資の促進
〈デジタル化・生産性向上〉
(1)地域未来DX投資促進事業 【24・3億円(15・9億円)】
・ 地域企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)実現に向け、産学官金が参画する支援コミュニティの支援活動や新事業の創出に向けた実証事業などを支援
(参考)中小企業生産性革命推進事業 【2000・6億円 ※令和3年度補正】
○設備投資、IT導入、販路開拓などへの補助を通じ、中小企業・小規模事業者の生産性向上などに向けた取り組みを支援
〈海外展開・新分野開拓・事業再構築〉
(2)ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業 【10・6億円(10・2億円)】
・ 複数の中小企業などが連携して行う、新たな付加価値創造を図る製品・サービス開発や事業再構築などの取り組みを支援
(3)JAPANブランド育成支援等事業 【8・6億円(5・5億円)】
○海外市場の獲得を目指す中小企業などによる新商品・サービス開発やブランディング、展示会出展などを支援
(参考)事業再構築補助金 【7123・0億円 ※令和3年度補正・令和4年度予備費】
・ コロナ禍の影響を大きく受けながらも新分野展開、業態転換などの事業再構築に挑戦する中小企業などを支援
〈研究開発〉
(4)成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業) 【132・9億円(104・9億円)】
・ 大学などと連携して行う研究開発やAI/IoTなどの先端技術を用いた革新的なサービスモデル開発などを支援
4.地域課題解決に向けた取り組みへの支援の拡充など
(1)地方公共団体による小規模事業者支援推進事業 【12・9億円(10・9億円)】
・ 地方公共団体と連携し、地域の実情を踏まえた小規模事業者による販路開拓・生産性向上に向けた取り組みを支援
(2)地域の持続的発展のための中小商業者などの機能活性化事業 【8・8億円(4・6億円)】
・ 地方公共団体と連携し、中小商業者などによるテナントミックスの実現に向けた施設整備やまちづくり人材の育成などを支援
(3)地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業 【8・4億円(6・5億円)】
・ 地域内外の関係主体と連携し、地域課題解決と収益性との両立を目指す取り組みや、地域一体で人材育成を行う取り組みなどを支援
(4)工業用水道事業費補助金 【34・8億円(20・3億円)】
・ 地域の産業インフラとして重要な工業用水について、事業者が実施する工業用水道施設の強靱(きょうじん)化を支援
5.伴走支援・人材確保支援など
〈人材育成・マッチング〉
(1)中小企業・小規模事業者人材対策事業 【8・9億円(8・4億円)】
・ 経営課題解決に資する人材確保のため企業の戦略策定やコンソーシアムによる人材確保支援体制の整備を支援
〈伴走支援など〉
(2)中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業 【54・0億円(40・0億円)】
・ 各都道府県によろず支援拠点を整備するなど、中小企業・小規模事業者が抱えるさまざまな経営課題に対応するための体制を整備
(3)小規模事業対策推進等事業 【54・8億円(53・3億円)】
○中小企業支援機関などを通じて行われる小規模事業者への巡回指導・窓口相談などを支援
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