仙台YEGは、東北大学からの要請を受け、中小企業の経営者を対象とする「地域イノベーションプロデューサー育成塾(以下RIPS)」の開講に参画した。地域におけるリーダー的経営人材を育成し、そして産学官に地域金融機関も加えた連携により新規事業を実現、地域経済を活性化する。
復興を推進するためのイノベーション
2011年、東日本大震災により経済的にも大きな被害に遭った仙台市。一刻も早い復興を図るためには、逆境をはねのける革新的な発想ができる経営人材の育成は急務であった。だが、当時は経営人材を育成するための継続的かつ組織的な仕組みがなかった。そのような中、東北大学より地域への新たな雇用機会の創出と産業振興に貢献できる人材の育成を目的としたRIPSの開講に協力してほしいとの要請を受け、仙台YEGはこれに参画。YEGと大学のコラボレーションというこの新たな取り組みについて、会長の新本考さんに伺った。
YEGの価値を高める積極的な関わり
「RIPSは、革新的な新事業を開発し、雇用機会を創出することによって地域の産業振興に貢献できる人材の育成を目的としております。この産学連携の中でもお互いを高め合うことができる新たな取り組みに、私たちは地域を支える青年経済団体として積極的に関わる必要があると思いましたし、結果的に地域におけるYEGの存在価値を高めることにもつながりました」
さらに、育成塾の効果を最大限に高めるためにカリキュラムの開発にも関わった。「育成塾の受講者として想定される私たちのような地域企業の経営者や後継者が抱えている現実的な問題、課題から生まれるニーズを把握したいという大学からの相談を受け、YEGメンバーへのアンケートを実施しました。受講対象者としての生の声が、カリキュラムの錬成に役立ったと考えています」
受講者の中には上場する企業も
カリキュラム策定の研究会を経て、育成塾は経営者としての資質や礎を段階的に習得できる内容を備え12年に開講した。15年には事業経営に必要な学びを終えた卒業生を後押しする仕組みとして、育成塾のカリキュラムに金融機関との共同研究を追加。学びの中で生まれた発想を資金面から支えてもらう道筋をつけるのが狙いだ。そのほか実践的な内容も、プレゼン術、事業計画策定、補助金申請、新入社員研修など多岐にわたる。
「枠にとらわれない新しい発想を基軸に組まれたカリキュラムからの幅広い学びを生かし、自社を上場企業にまで成長させた参加者もいます。仙台YEGからの受講者にも、ワイナリー経営に着手するなど、独自のアイデアを発展させ新たな事業展開にたどりついた例もあります」と、新本会長は話す。
地域とメンバー双方のメリットを追求していきたい
最後に、これからの仙台YEGの活動について聞いた。
「現在、RIPSの基本的な運営は大学がメインで行っていますが、仙台YEGはメンバーも含めた受講者の斡旋(あっせん)を通して、地域に貢献できる人材輩出の循環を維持していきます。また、近い将来、働き手の不足が今以上に顕著となることを見据え、外国人留学生を率先的にメンバー企業に受け入れる体制や、ベンチャー企業との交流を図ることを仙台YEGとしても推進していきたいと考えています。YEGがなくてはならない存在であり続けるためにも、地域とメンバー双方にとってのメリットをこれからも追求していきたい」と新本会長は語ってくれた。
【仙台商工会議所青年部】
会長:新本 考
設立:2002年
会員数:246人
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