Q 2023年10月から、インボイスの保存などをしなければ、消費税の仕入税額控除を受けられなくなると聞きました。インボイス制度の仕組みと注意点について教えてください。
A インボイス制度の下では、例えば商品の買い主が課税仕入などに係る消費税額の控除を受けるためには、一定の場合を除き、所定の事項を記載した帳簿およびインボイス(適格請求書)などの保存が必要です。「適格請求書発行事業者」として登録していない事業者は、取引先にインボイスを交付できません。その結果、消費税の支払義務を負う課税事業者から取引先として選ばれなくなる可能性があります。原則として23年3月31日までに登録申請を行うようご注意ください。
課税売上高が一千万円を超える事業者は、課税事業者として消費税の申告と納付を行う義務があります。一定の要件の下で、課税売上に係る消費税額から、課税仕入などにより負担した消費税額を控除する「仕入税額控除」ができますが、2023年10月1日からは、仕入税額控除を受けるためには、「インボイス(適格請求書)」の保存が求められます。
インボイス制度でこう変わる
インボイスは、「適格請求書発行事業者」として、あらかじめ国税庁に登録を申請し、審査を経て登録を受けた課税事業者だけが交付できます。課税事業者が適格請求書発行事業者として登録を受けるか否かは事業者の任意ですが、登録を受けなければインボイスを交付できません。インボイスを交付できない未登録の事業者は、消費税の支払義務を負う課税事業者から取引先として選ばれなくなる可能性があります。国税庁によれば、インボイス制度が導入される23年10月1日から登録を受けるには、原則として3月31日までに登録申請手続きを行う必要があります。
適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者には、原則として、インボイス(適格請求書または適格簡易請求書)を交付する義務が生じます。また、返品・値引などにより対価の返還などを行う場合には「適格返還請求書」を交付し、インボイスに誤記などがあった場合には、修正した各インボイスや適格返還請求書を交付する義務もあります。インボイスを交付した事業者は、その写しを、交付日の属する課税期間の末日の翌日から2カ月を経過した日から7年間保存する義務があります。
仕入税額控除に必要な要件は?
インボイス制度の下では、商品を購入するなどした課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、「売り手が交付するインボイス」「買い手が作成する仕入明細書等(インボイスの記載事項が記載され、相手方の確認を受けたもの)」などの保存が必要となります。保存期間は、課税期間の末日の翌日から2カ月を経過した日から7年間です。
現行制度と異なり、「3万円未満の課税仕入」や「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」においても、帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けることはできません。また、仕入先から交付された請求書等に「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の記載がないときでも、交付を受けた事業者が追記することはできません。
ただし、インボイスなどの交付を受けることが困難な一定の取引(3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客の運送等)については、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
適格請求書発行事業者以外の者(免税事業者や消費者等)から行った課税仕入については、仕入税額控除の適用を受けられませんが、経過措置として、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等および経過措置の規定の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存している場合は、「23年10月1日から26年9月30日までは仕入税額相当額の80%」「26年10月1日から29年9月30日までは仕入税額相当額の50%」を限度として、仕入税額控除が認められます。 (弁護士・谷田 哲哉)
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