東京商工会議所は1日、臨時議員総会を開催し、三村明夫会頭の後任に小林健氏(三菱商事相談役)を会頭に選任した。任期は2025年10月31日。3期9年の任期を満了して退任した三村前会頭は名誉会頭に就任する。また、日本商工会議所は17日に開催する臨時会員総会で次期会頭を選任する。
東京商工会議所 小林健(こばやし・けん) 会頭
東商の小林新会頭は、臨時議員総会で所信を表明。「日本再生・変革に挑む~志を高く、新しい時代を切り拓く~」をスローガンに掲げるとともに、東商初代会頭の渋沢栄一翁の「逆境のときこそ、力を尽くす」との信念に触れ、「今こそ、長年の停滞から抜け出し、成長へと転換する好機と捉え、企業経営者が積極的に行動を起こしていかなければならない」と自己変革を呼び掛けた。
また、副会頭の野本弘文氏(東急会長)、田川博己氏(JTB相談役)、広瀬道明氏(東京ガス会長)、金子眞吾氏(凸版印刷会長)、斎藤保氏(IHI相談役)、上條努氏(サッポロホールディングス特別顧問)、大島博氏(千疋屋総本店社長)、山内隆司氏(大成建設会長)と石田徹専務理事は再任。新たな副会頭として、倉石誠司氏(本田技研工業会長)、阿部貴明氏(丸源飲料工業社長)が選任された。
小林新会頭は臨時議員総会後の記者会見で、円安の影響について、「円安の要因は複合的だ。短期的な視点では日米金利差、金融政策のスタンスの違いがある」と述べるとともに、長期的な視点については、「日本の国際競争力が低下している、言い換えれば、日本が『安い国』になっているという根本的な問題もあるのではないか」と指摘。その上で、「『安い日本』を与件として、日本経済や産業構造はどうあるべきか検討する視点が必要ではないか」と述べ、「円安を逆手に取り、インバウンド需要の取り込み、輸出の促進などできるところから、少しずつでもよいので、積極的に海外マーケットに挑戦することも必要だ」との考えを示した。
日銀の金融政策については、「現在、日米金利差を背景に円安が進んでいるが、円を適正な水準に戻すために、日銀が取り得る手段は多くない。今の日本にとって円安はデメリットの方が大きいという見方が増えつつある中、日本だけがいつまでもゼロ金利・円安を維持することは難しい」と指摘。「政府・日銀は、これまでの金融緩和政策の点検・評価をしっかり行い、対応の優先順位付けを含めて、出口戦略をしっかりと検討し、分かりやすく国民に説明すべきだと思う」と述べた。
中小企業が持続的に賃上げできる環境を整備するために必要なことについては、「中小企業の労働生産性は大企業に比べて低いが、その要因は価格転嫁力の弱さであり、その克服のために取り組んでいるパートナーシップ構築宣言運動によって、取引適正化を推進することだ」と強調。「賃上げのモメンタムが維持されることと、企業の賃上げ原資を確保するための取引適正化が実現されることの両輪が必要」との認識を示した。
所信で三村名誉会頭の「現場主義」「双方向主義」を継承・発展させる方針を掲げたことについては、「原点は対話である。これは今も昔も変わらない私の信条だ。対話がなければ新しいアイデアも創造もないという信念を持っている」と強調。今後、商工会議所会員企業などとの対話を積極的に進めていく考えを示した。