政府は11月10日、第12回新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)を開催し、企業間の労働移動の円滑化・リスキリング・構造的賃金引き上げについて議論が行われた。会議に出席した日本商工会議所の小林健特別顧問(役職は当時)は、労働移動について、「求職者のリスキリングから企業へのマッチングまでを一気通貫で支援することで、労働者のチャレンジを促す仕組みを構築すべき」と指摘。岸田首相は、来年6月までに労働移動円滑化のための指針を策定する考えを示すとともに、「労働移動の円滑化、そのための学び直しであるリスキリング、これらを背景とした構造的賃金引き上げの三つの課題に同時に取り組む」と述べた。
小林特別顧問は、中小の賃上げについて、「原資の確保が何より重要」と指摘。そのため、「取引価格適正化とその実効性確保」「DX人材の育成などによる生産性向上などへの支援強化」が必要との見方を示した。
来春の賃金交渉については、「物価上昇への配慮は当然だが、企業の支払い能力などを十分考慮し、労使間でしっかり協議して決めることが必要」と強調。人への投資については、「地方企業には、地域に根差した経験を積み重ね、それを地域社会や企業に還元することを志向する多くの経営者、労働者がいる」と指摘し、「リスキリングだけではなく、こうした地域経済を支える労働者にも投資の便益を実感できるようにしていくことが、分配の観点から必要ではないか」と述べた。
岸田首相は、構造的賃金引き上げを行うため、「労働者の立場に立って、円滑に移動できる労働市場をつくり上げる」と強調。「労働者が転職・キャリアアップについて相談し、正確な情報を得て転職する、という一連のプロセスを一気通貫で支援する仕組みを官民協力してつくり上げる」と述べた。
また、労働政策として「失業者に対する支援とともに、在職者に対する支援や兼業・副業の促進を強化する」との考えを表明。企業側には「経験者採用を進めていくためにも、個々の企業の実情に応じて、日本型の職務給への移行などの賃金の在り方を検討いただきたい」と要請した。
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