政府は10月26日、首相官邸で第3回「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」(議長・岸田文雄首相)を開催し、二酸化炭素の排出に負担を求めるカーボンプライス(CP)の検討を開始した。会合では、西村康稔GX実行推進担当相(経産相)が、「今後10年間に150兆円超の官民GX投資を実現するために、成長志向型カーボンプライシング構想を速やかに実現する必要がある」と強調し、構想の具体化に向けた考え方を提示。岸田首相は、年内にも開かれる次回会合までに具体的な制度案を作成するよう指示した。
会議に出席した日本商工会議所の小林健特別顧問(役職は当時)は、「成長志向型カーボンプライシング構想」について、「日本が置かれている状況や立場、アジアなど周辺諸国との関係強化によるサプライチェーンの強靭(きょうじん)化といった視点も踏まえ、国益にかなう日本独自の仕組みを検討・構築すべき」と指摘。制度設計の際には、「中小企業の実態を十分に踏まえて検討するとともに、導入に当たっては段階的な措置をとり、できる限り前広かつ丁寧に周知することが望ましい」との考えを示した。
GXリーグについては、「排出権取引などの仕組みが動き出せば、参加する大手企業とサプライチェーンでつながる中小企業にも必ず影響が出る」と強調。「カーボンニュートラルの取り組みを中小企業も含め、より多くの日本企業のビジネスチャンスにつなげるべく、大企業と中小企業が一体となって排出削減に取り組めるよう、パートナーシップや協業が進むような制度設計上の工夫が重要だ」と述べた。
西村GX実行推進相は、成長志向型カーボンプライシング構想の基本的な考え方として、代替技術の有無や国際競争力への影響などを踏まえて実施しなければ、わが国経済に悪影響が生じる恐れや、国外への生産移転が生じることを踏まえ、「直ちに導入するのではなく、GXに取り組む期間を設けた上で導入」する考えを表明。最初は低い負担で導入し、徐々に引き上げていくとともに、その方針を予め示すことで、GX投資を前倒しすることや、カーボンプライシング導入の結果として得られる将来の財源を裏付けとした「GX経済移行債(仮称)」の発行により、大胆な先行投資支援を行うことなどを示した。
岸田首相は、成長志向型カーボンプライシングの制度設計について、「炭素に対する賦課金と排出量取引市場の双方を組み合わせるハイブリッド型とするなど、効果的な仕組みを検討するとともに、排出量取引市場では炭素価格の過大な変動を起こさせず、安定化させる公的機能を組み込むこと」などを要請。次回会合までに成長志向型カーボンプライシングの具体的な制度案を示すよう指示するとともに、今後10年を見据えた具体的なロードマップの素案を提出する考えも示した。
成長志向型カーボンプライシング構想の基本的な考え方
◆代替技術の有無や国際競争力への影響などを踏まえて実施しなければ、わが国経済に悪影響が生じる恐れや、国外への生産移転(カーボンリーケージ)が生じることを踏まえ、直ちに導入するのではなく、GXに取り組む期間を設けた上で導入。
◆最初は低い負担で導入し、徐々に引き上げていくとともに、その方針を予め示すことで、GX投資を前倒し。
◆カーボンプライシング(CP)導入の結果として得られる将来の財源を裏付けとした「GX経済移行債(仮称)」を発行。これにより、大胆な先行投資支援。
※GX実行会議資料より編集部作成
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