日商 Assist Biz

更新

こうしてヒット商品は生まれた! 透明醤油

素材の色をそのまま生かせると人気の「透明醤油」。醤油の香り・コクはそのまま残し、料理の見た目を美しく仕上げることができる。100㎖500円(税別)

フンドーダイは、戦国時代末期より営んでいた両替商や造り酒屋から、1869年にしょうゆの製造へと業態転換を図り、昨年150周年を迎えた。長年地域の味覚を支えてきた同社が、周年記念商品として昨年発売した「透明醤油」が人気を博している。日本の伝統調味料の概念を覆す同商品は、女性開発者が10年間温めてきたアイデアの結晶だ。

「しょうゆも透明にしたらおもしろいね」を実現

「90度曲がる変化球のような商品」。開発者自らそう形容するのは、フンドーダイが2019年2月に発売した「透明醤油」だ。しょうゆの製造で150年超の歴史を誇る同社が、周年記念として開発したものだ。しょうゆの味はそのままに、色を透明化した同商品は、素材の色が生かせる、服にこぼしても汚れが目立ちにくいなどのメリットから、発売後すぐに注目を浴びる。「1万本売れれば御の字」という当初の予想を覆し、今や30万本を超える人気商品となっている。

それにしても日本の伝統調味料であるしょうゆを、透明にしようと思った発端は何だったのか。

「実は、10年ほど前に製造機械の勉強をしていたとき、透明化は技術的に可能だとわかりました。当時は製品化まで考えませんでしたが、2017年ごろ市場にコーラや紅茶の透明飲料が登場して、人気を博しているのを見て、しょうゆも透明にしたらおもしろいのではと思ったんです」と同商品の生みの親である同社商品開発室係長の早田文子さんは振り返る。

ちょうどその頃、同社では創業150周年向けのプレミアム商品「平成」の開発に乗り出していた。厳選した九州産の丸大豆と小麦をじっくりと熟成し、地元熊本に古くから伝わる〝赤酒〟と、高級砂糖として知られる“和三盆〟を加えて味を調えた特醸甘口しょうゆだ。そんな王道を行く商品に続く第2弾として、早田さんは“透明のしょうゆ”の試作に取り掛かった。

「しょうゆ=和食」というイメージを変えたい

つくり方は、途中までは従来のしょうゆと同じだ。原料の大豆と小麦に麹と塩を加えて発酵・熟成させ、本醸造しょうゆをつくる。それを特殊技術によって透明化処理を施したのち、味を調合するという流れが、すでに早田さんの頭の中には描かれていた。

ところが、開発の道のりは平たんではなかった。最初のハードルは、「しょうゆを透明にして何に使うのか?」という社内の声に答え、承認を得ることだった。意外性から注目されても、用途があいまいでは市場に提案するのは難しい。

「私の中には、しょうゆ=和食というイメージを破りたいという思いがありました。もともと首都圏の市場を意識していたので、マーケティングも兼ねて東京のシェフに試作したしょうゆを使ってもらい、その意見をもとにつくり直すというやりとりを繰り返しました」

シェフから特に指摘されたのは甘さだ。九州のしょうゆは全般的に甘いため、料理に使うなら甘さを抑えた方がいいと言われた。そこで、料理への使いやすさを意識した、甘さを抑えた味に固まる。それを使ってさまざまな洋食メニューを試作する中で、しょうゆが透明だと食材そのものの色が生かせる、しょうゆのジュレ(ゼリー)やムースなど新たな活用法が提案できるなどのメリットがわかり、商品化の正式なゴーサインをもらった。

次なるハードルは変色だ。しょうゆは時間とともに黒くなるが、透明化したしょうゆも同様で、徐々に黄色っぽくなってくるのだ。それをできるだけ起こりにくくするために、最終調合で使う原料の選定を見直すことになった。

「すでに味が固まったあとだったので、味を変えずに使う原料を替えなければなりません。変色を調べる保存試験には半年は掛かり、何度も繰り返す時間的な余裕がなかったので、原料の組み合わせを一度にたくさん考えるのがものすごく大変でした」

保存試験の終了後に官能検査を行い、決めた味わいで、かつ最も透明感を保っているものを選び出し、ようやく商品化のめどが立った。

現在もSNSの投稿が日に日に増えている

同商品の発売に当たっては、洋食シーンでの活用だけでなく、ラグビーワールドカップ日本大会や東京オリンピック・パラリンピックなどで増えることが予想されるインバウンドの消費も意識していた。また、売り場では先に発売した「平成」と並べて置かれることを想定し、パッケージのデザイン性にもこだわったという。そうして2018年12月にプレスリリースを出し、サンプルも配布して商品の周知を図ったが、周囲の反応はあまり芳しいものではなかった。

ところが年明け早々、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」を皮切りに、全国ネットの情報番組内で商品が紹介されるや、たちまち火がつく。特に首都圏での反応がよく、当初目標の1万本を瞬く間に達成した。100㎖500円という高価格にもかかわらず普通のスーパーでも扱われ、好調な売れ行きを示しているという。

「当社オンラインショップの注文を見ていると、圧倒的に東京の方が多く、新しいものが好きな方やSNSをよく利用している方などが購入している印象です。実際、SNS上で『#(ハッシュタグ)透明醤油』の投稿が日に日に増えていて、口コミが売れ行きに大きく貢献してくれています」

発売から1年が過ぎた現在、同商品の累計販売数は30万本を越え、同社のしょうゆ製品売り上げ全体の14%を占めるまでに成長している。女性の柔軟な発想から生まれた“変化球”は、常に新しいものを求める消費者のストライクゾーンに見事収まった。

会社データ

社名 株式会社フンドーダイ五葉(ふんどーだいごよう)

所在地 熊本県熊本市北区楠野町972

電話 0120-040-602

HP:https://www.fdgoyo.jp/

代表者 山村脩 代表取締役

設立 2014年

従業員 120人

※月刊石垣2020年4月号に掲載された記事です。

次の記事

株式会社きくち

伝統菓子から創作菓子まで、数多くの甘味を製造販売しているきくち。同店の看板商品が、「干しいもパイ ほっしぃ~も」だ。茨城県の特産品である干し芋をパイで包んだ和洋菓子…

前の記事

株式会社ちむら

創業慶応元年。ちくわひと筋155年の歴史を誇る老舗・ちむら。創業間もない頃から、質素倹約を奨励していた藩のお殿様の意向を受け、つくり始めたのが「とうふちくわ」だ。豆腐…

関連記事

株式会社北見ハッカ通商

国内唯一のハッカの産地・北海道北見市で、ハッカ製品の製造・卸売業を営む北見ハッカ通商。創業以来の主力商品であるハッカ油は、長い間日の目を見なかったが、地道な営業努力…

株式会社マーナ

2022年に創業150周年を迎える生活雑貨メーカー・マーナ。長い歴史の中で数々のアイデアグッズを世に出し、ヒットに導いてきた同社で堂々の看板を張っているのが、15年に発売さ…

株式会社リンクライン

特例子会社として2010年に設立したリンクライン。当初よりせっけんの製造・販売を主事業とし、機械では表現できないフォトジェニックな商品づくりに取り組んできた。そんな同社…