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こうしてヒット商品は生まれた! 干しいもパイ ほっしぃ~も

1つ食べたら「もっとほしい」と手が伸びる、飽きのこない味が魅力。干しと星を掛けて星形の顔、サツマイモの足を持ったキャラクターも制作し、PRに一役買っている。1個130円(税込)

伝統菓子から創作菓子まで、数多くの甘味を製造販売しているきくち。同店の看板商品が、「干しいもパイ ほっしぃ~も」だ。茨城県の特産品である干し芋をパイで包んだ和洋菓子で、程よい甘さとサクサクした食感が人気を博し、2010年発売以来のロングセラーとなっている。同商品の好調な売れ行きは、干し芋消費量の拡大とブランド向上にも寄与している。

ありそうでなかった干し芋スイーツ

干し芋の生産量日本一を誇る茨城県において、ひたちなか市はその約8割のシェアを占める‶干し芋王国〟である。製造が始まったのは100年以上前の明治時代後期で、原料のサツマイモの生育に適した水はけの良い土壌に恵まれていたこともあり、主に農業従事者の副業として定着した。以降、農家ごとに異なる製法が受け継がれ、地域が誇る特産品となった。

そんな地域資源を活用して誕生したのが、「干しいもパイ ほっしぃ~も」である。干し芋の製造過程で出る、サツマイモの両端の切れ端(切甲・せっこう)を使ってあんをつくり、パイ生地で包んで焼き上げたスイーツだ。程よい甘さと香ばしいパイのサクサクした食感がおいしいと、2010年4月の発売後すぐに注目を集め、今では年間約160万個を売り上げる。

それにしても、サツマイモを使ったスイーツは数々あるが、干し芋を活用したスイーツというのは意外にないものだ。

「干し芋は天日干しされているので、加工が難しいんです。当店でも干し芋は菓子づくりに使ったことがなく、最初は頭を抱えました」と製造元のきくち社長・菊池雅人さんは、開発当初を振り返る。

地域資源活用の取り組みから開発がスタート

実は、同商品は‶干し芋ありき〟でつくられたものだ。ひたちなか商工会議所が06年ごろからスタートした、「地域資源を活かした名産品開発への取り組み」の中から生まれた3番目の商品に当たる。

最初に企画開発したのは、地元のパン菓子組合と連携して、県のブランド豚・ローズポークを活用した「勝った! の街の勝つサンド」。2番目は、料飲業組合とコラボして、生産量日本一の煮ダコを使った「みなとの多幸めし」だ。どちらも地域で好評を博したが、次の商品は手軽に持ち帰れる土産物にしたいと考え、白羽の矢が立ったのが干し芋である。

「『今度は干し芋で何かをつくりたい』と声が掛かりました。干し芋の両端は規格外の部分なので、それを有効活用したらどうかと思い立ちました」

とはいえ、そこから3~4カ月は暗中模索の日々だった。干し芋の加工方法が見つからなかったのだ。菊池さん自身、その10年も前から干し芋を使った新商品を考えてきたが、うまくいかなかった経緯があった。

「いったん干したサツマイモは、蒸しても焼いても元には戻りません。フリーズドライにする方法ならどうかと専門業者に問い合わせましたが、干し芋自体がフリーズドライに近い状態だから無理と断られてしまって……」

そんな菊池さんにヒントを与えてくれたのは、奥さんの何気ないひと言だった。昔、固くなった干し芋を煮て食べたことがあるというのだ。早速、干し芋を細かく切って試したところ、思ったようなペースト状になった。その後どれくらい細かくして煮ればいいのかを何度も試して、ようやく絶妙な頃合いを見出した。

「煮た干し芋もおいしいけれど、味がぼやけるんです。もっと味にキレを出すため、少しリンゴを足してみることにしました。もともとサツマイモとリンゴは相性がいいので、程よい甘さにほのかな酸味が加わり、狙った味になりました」

できあがった干し芋のあんを包む生地の素材をいろいろ試した結果、最も相性が良かったのがパイだ。パイ生地には砂糖を使わないため、一緒に食べても干し芋の味を邪魔しない。こうして外はサクサク、中はしっとりのスイーツが完成し、販売を開始した。

インパクト×地域色にこだわってネーミング

同商品の主な販路は、同店のほかJR常磐線の県内主要駅、高速道路のサービスエリアなどだ。発売に際して、最も工夫したのは商品名である。地域色があり、かつインパクトのあるものを検討した結果、「ほっしぃ~も」に決定した。これは、かつて同市を来訪したアイドル歌手に、別の菓子の名付けを頼んで出てきた名前だそうだ。結局は採用されなかったためこの商品に付けたが、ピタリとハマって記憶にも残りやすい。しかもサブネームに付けた「HOSHII‒MORE」は、「干し(芋)」と「もっと」を掛けており、なかなかシャレが利いている。

「もっとほしいと思ってもらえるように、あえてサイズを小振りにしました。お菓子は、一つでおなかがいっぱいにならないくらいがちょうどいい。それにお菓子が小振りなら箱もコンパクトになり、持ち帰りやすいというのもあります」

発売当初、地元の新聞が取り上げてくれたこともあり、最初に用意した5000個はあっという間に完売した。その後も順調に売れ行きを伸ばし、今や堂々のヒット商品に成長した。

同商品は現在、干し芋を活用した観光消費の拡大を目指す、同会議所の「ほしいも魅力発信プロジェクト」の一角を担っており、地域のPR商品としても期待が掛かる。

「干し芋はサツマイモの品種によっても、味わいや食感が微妙に異なります。今後も新しいお菓子を開発して、地域の役に立てれば」と菊池さんは意欲を燃やしている。

会社データ

社名:株式会社きくち

所在地:茨城県ひたちなか市東石川3142-5

電話:029-274-2121

HP:https://www.kikuchi-okashi.com/

代表者:菊池雅人 代表取締役社長

設立:1972年

従業員:117人

※月刊石垣2020年5月号に掲載された記事です。

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