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こうしてヒット商品は生まれた! とうふちくわ

創業慶応元年。ちくわひと筋155年の歴史を誇る老舗・ちむら。創業間もない頃から、質素倹約を奨励していた藩のお殿様の意向を受け、つくり始めたのが「とうふちくわ」だ。豆腐の風味と柔らかい食感が持ち味の同商品は、普段の日はもちろん、「ハレの日」などにも必ず食べられるほど鳥取庶民の食卓をにぎわし、地域の食文化を担うまでに愛されている。

質素倹約の具体策として江戸時代に誕生した「とうふちくわ」

鳥取県東部、かつての因幡国(いなばのくに)の人にこよなく愛され、今や地域の食文化といえるほど食卓に浸透している「とうふちくわ」。その名の通り、木綿とうふを主原料に、魚のすり身を加えて、ちくわにしたものだ。遠くさかのぼること江戸時代、鳥取では漁港の開発が遅れ、魚は贅沢な食べ物とされていた。当時の鳥取藩主・池田公は、藩の財政が厳しいことから、城下の庶民に対して質素倹約を奨励し、「魚の代わりに豆腐を食べるように」と促した。そうした背景から、魚の代わりに豆腐を主原料として誕生したのがとうふちくわだ。

「最初につくったのは初代・千村清次郎ですが、『とうふちくわ』は一般名称で、その後ほかの店でも製造されるようになりました。1店が製造を独占しなかったからこそ、地域に愛され、『ちくわ=とうふちくわ』と言われるほど庶民に定着したのだと思います」と同社専務の千村大輔さんは説明する。

ちなみに総務省統計局「家計調査」によると、都道府県民1人あたりの一般的な「ちくわ」の年間消費量の全国平均は約22本だが、鳥取県は約65本で、支出金額とともに過去何年間も不動の1位を維持している。この数字にとうふちくわの消費量も加えてみると、さらに突出した数字になるのは間違いない。しかも、とうふちくわは鳥取県西部ではあまり流通していないそうで、いかに地域に根付いた食べ物であるかがうかがえる。

直売店用に商品を見直し新たな味に挑む

同商品は形こそ一般的なちくわと同じだが、色はほんのり黄色味がかった白色で、「これは豆腐? それともちくわ?」と聞きたくなる外見をしている。メーカーによってそれぞれ風味や食感は違うだろうが、同社が当初から愚直に守り続けてきたのは、「豆腐7、魚のすり身3」という割合だ。豆腐は木綿豆腐、魚はスケソウダラやイトヨリダイなど淡白な白身魚を使用し、より豆腐の風味が感じられるように工夫されている。その二つをしっかりと練り合わせ、細い竹(現在はアルミの棒)にちくわ状に付けて形を整え、蒸す。

「一般的に、とうふちくわといえば蒸したものをいいます。柔らかい食感と風味が持ち味ですが、『焼きとうふちくわ』も香ばしさがあって、食欲をそそります」

地元の百貨店や土産物店、スーパーを主な販路としてきた同社だが、2002年に新工場に併設した直売店の操業を開始した。その後4店舗まで増やし、直売店とスーパーでの販売に力を入れるようになる。商品ラインアップも、ネギ入り、ショウガ入り、カレー味、レモン味など種類も増やしていった。そんな中で問題点がクローズアップされるようになる。

「売れ行きは安定していましたが、直売店とスーパーとの価格差が気になっていました。同じ商品なのに売る店によって価格が違うのでは、消費者も釈然としないでしょう。それで旗艦直売店を改装するのを機に、直売店で販売する商品を見直し、リニューアルすることに決めました」

豆腐と魚のすり身の配合割合は維持しつつ、それ以外を全面的に見直すことにした。例えば、自社工場でつくっている原料の豆腐の豆乳濃度を高くして、大豆の香りがより感じられるようにし、白身魚のすり身も変えた。具材に使うネギやショウガなども、鳥取県産に切り替えた。これによって、食感がまったく違うものになった。

そして最も大きく変えたのは調味料だ。かつて用いていた化学調味料を、コンブやカツオ、シイタケなどの天然素材エキスに切り替え、素材本来の旨味を生かそうと考えた。「苦労したのは、やはり調味料の配合です。組み合わせはそれこそ何万通りもあり、ちょっとした配合の違いで甘さや辛さ、先味や後味がガラッと変わってしまいます。求める配合を見出すまで、1年以上掛かりました」

県内総売上本数100万本 これからも攻めの姿勢で

「身近な上質、進化し続ける老舗、鳥取の誇り」という三つのコンセプトの下、安心安全で、よりおいしくリニューアルされた商品は、パッケージも一新して2019年4月から販売をスタートした。ラインアップも「鳥取和牛」「ワインに合うトマトとチーズ」「ねぎ」など、常時10種類を揃え、それぞれ違った味わいが楽しめるように工夫している。こうした立ち止まらない企業姿勢により、直営店やスーパーなどを合わせた年間の総売上本数は100万本にも上り、安定した売れ行きを維持しているという。

「いずれの商品も食べていて飽きの来ない味であることが、愛され続ける秘密なのかもしれません。地元の人は何も付けずにそのまま豪快にちぎって食べることが多いですが、焼いても炒めても煮てもおいしい。ワサビじょうゆやショウガじょうゆに付けてもいけますよ。ただ、素材の味が生きているので、まずは常温でそのまま味わってほしいですね」

地域のソウルフードとして大切に育まれてきた同商品。願わくは、地元以外にも販路を広げてほしいものだ。進化し続けることをコンセプトに掲げ、「今の味付けが最終形ではない」(千村さん)というだけに、より多くの人が口にできる商品になることに期待したい。

会社データ

社名:株式会社ちむら

所在地:鳥取県鳥取市河原町布袋556

電話:0858-76-3333

HP:http://www.toufuchikuwa.com/

代表者:千村直美 代表取締役

設立:1952年

従業員:53人

※月刊石垣2020年3月号に掲載された記事です。

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