公益財団法人日本生産性本部はこのほど、「日本の労働生産性の動向2022」を発表した。21年度の日本の時間当たりの名目労働生産性(就業1時間当たり付加価値額)は4950円。経済活動の正常化を背景に、コロナ前の水準をわずかながら上回り、1995年度以降で最も高くなった(図参照)。また、日本の労働時間は徐々に短縮しており、特に、2020年度は、コロナ禍での出社制限や営業自粛などもあり、一般労働者、パートタイム労働者ともに労働時間が大きく減少。21年度になると経済活動を正常化する中で労働時間も増加に転じている。
21年度の時間当たり実質労働生産性上昇率はプラス1・2%。プラスになったのは2年ぶりで、前年度から1・9%ポイント改善した。四半期ベースで見ると、21年度は4~6月期(前期比プラス0・6%)、7~9月期(同0・4%)、10~12月期(同1・0%)と上昇が続いたものの、22年1~3月期(前期比マイナス0・3%)にマイナスへと転じている。足元の22年4~6月期(同0・1%)もマイナスとなっており、回復傾向にあった労働生産性はやや足踏みするような状況になっている。
21年度の日本の1人当たり名目労働生産性(就業者1人当たり付加価値額)は808万円となり、3年連続で低下していた状況から回復に転じた。実質ベースの1人当たり労働生産性上昇率は前年度比プラス2・2%で前年度から5・9%ポイント改善。20年度(マイナス3・7%)がコロナ禍による大幅な経済の収縮により労働生産性も大きく落ち込んだ反動による側面が大きいが、1996年度以降で見ると最大の改善幅となっている。近年は、労働時間が短縮傾向にあったことから、就業者1人当たりよりも就業1時間当たりで見た労働生産性上昇率の方が高くなっていたが、2021年度は、労働時間(前年度比プラス1・0%)が増加に転じたことから、就業1時間当たりで見た方が低くなっている。
業種別に見ると、サービス産業の労働生産性上昇率は、消費税率引き上げと緊急事態宣言で大きく落ち込み、その後も低迷が続く。小売業は、21年度も弱含みの状況が続く一方で、賃金は、人手不足などを背景に上昇傾向。飲食店では、緊急事態宣言が最初に発出された20年第2四半期に労働生産性が大きく落ち込み、その後いったん回復したものの、20年度から21年度にかけての労働生産性は05年以降で最も低い水準になっている。製造業の労働生産性は、21年初めにはコロナ前水準を上回るまでに回復。労働生産性の回復局面が21年第2四半期まで続いたが、資源価格上昇や半導体不足などを背景にその後反落するような状況にある。