日本商工会議所の小林健会頭は3日、復興庁に渡辺博道復興大臣を訪ね、「東日本大震災からの『復興・創生』に関する要望」(2023年2月16日決議)を直接手渡し、創造的復興の実現に向けた取り組みの加速・深化、福島の再生・原子力災害の克服など要望内容の実現を求めた。復興要望の対面での手交は3年ぶり。渡辺大臣は「課題解決に全力で取り組む」と述べ、復興の加速に意欲を示した。
要望書の手交式には、日商から小林会頭はじめ、藤﨑三郎助副会頭(東北六県商工会議所連合会会長、仙台・会頭)、桑原茂・東日本大震災沿岸部被災地区商工会議所連絡会代表(塩釜・会頭)、草野清貴同副代表(相馬・会頭)が、復興庁からは渡辺大臣、中野英幸大臣政務官のほか、同庁幹部が出席。日商側からは、ALPS処理水の海洋放出への的確な対応・風評対策の徹底をはじめ、産業集積への支援、観光振興、インフラ整備の推進、自己変革に挑戦する事業者への支援、原子力災害への克服などについて要望している。
渡辺大臣は、被災地企業への復旧支援や復興庁への人材派遣など、商工会議所の復興支援の取り組みについて謝意を表明。要望書の内容への理解を示すとともに、「現場主義を徹底し、被災地に寄り添いながら課題解決に全力で取り組みたい」と述べた。
日商の要望書では、被災地の現状について、官民を挙げての取り組みにより、域内GDPが震災前の水準を超えるなど復興が着実に進展している一方で、水産加工業や観光業などの基幹産業が依然として厳しい状況にあるほか、若者・女性の流出により、全国に先駆けて人口減少が進み、深刻な人材不足・後継者難に直面している点などを指摘。また、ALPS処理水の海洋放出については、「国が科学的根拠に基づく正確な情報を継続的に発信し、国内外における理解醸成を図り、風評の発生を最大限抑制すべき」と強調している。
具体的な要望項目は、「『創造的復興』の実現に向けた取り組みの加速・深化」について「先端研究開発拠点の誘致・整備、サプライチェーン再構築などの動きを踏まえた企業立地の促進」「観光振興による東北ブランドの確立、交流人口の 拡大」「産業復興を支える人材確保、起業・産業人材育成への支援」「『広域経済交流圏』の構築に向けたインフラ整備の推進」「自立に向けた資金繰り支援の継続など」の5点を要望。「福島の再生・原子力災害の克服」に向けては、「ALPS処理水海洋放出への的確な対応・風評対策の徹底」「風評を乗り越え、自己変革に挑戦する事業者への支援」「被害実態に合った原子力損害賠償の完全実施」「事業再建・自立に向けた支援の継続・拡充」「着実な廃炉の実現と除去土壌の早期搬出」を求めている。
最新号を紙面で読める!