日本商工会議所の小林健会頭は1日、定例の記者会見で、中小企業の賃上げについて、3月末に公表予定の「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」で先行して集計した東京都内の企業など約500社の参考データを公表し、賃上げ実施予定企業が58.2%、賃上げ率4%以上と回答した企業の割合が28.5%に達したと述べた。最低賃金については、政府方針ありきではなく「法にのっとって、皆が納得するようなプロセスで決めてほしい」と強調。採用活動早期化に伴う中小企業への影響については、大きな影響はないとの考えを示した。
小林会頭は、3月末に公表予定の「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」(調査対象=全国47都道府県約6000社)について、東京商工会議所の会員を中心に約500社の回答を先行して集計したデータから「賃上げ実施予定」と回答した企業が58.2%に達したと述べた。実施予定企業の賃上げ率については、「2%以上」は66.8%と3分の1を超え、そのうち、「4%以上」が28.5%。賃上げの内容については、「定期昇給」が75.6%で最多。「ベースアップ」(47.7%、前年度比13.6㌽増)、「賞与・一時金の増額」(35.9%、同9.5㌽増)の順で続いている。
小林会頭は、集計途中の数字を発表したことについて、「賃上げ実現に向けた価格転嫁推進の機運を醸成するという意味においても、ある程度傾向が読み取れたことからお伝えすべきと考えた」と述べた。賃上げ率の上昇やベア・賞与増額などの回答割合が増加した背景については、「各社の生産性向上に向けた努力もさることながら、価格転嫁がある程度進んでいることを示している。足元の物価上昇をカバーしようという意気込み、従業員への還元を通じて経済を循環させようという心意気を感じさせる」との見方を示した。
中小企業の賃上げを後押しするパートナーシップ構築宣言については、実効性向上に向けた取り組み先進地域として埼玉県の事例を紹介し、「参画した企業にさまざまなインセンティブ(補助金の加点や制度融資の要件化など)を付与する仕組 みがうまく回り始めている」と指摘。「福岡県、石川県、愛知県、大分県、北海道など各地に同様の動きが広がっている」と述べ、全国への広がりに期待を示した。
最低賃金については、「最低賃金の引き上げそのものに反対しているわけではなく、法にのっとって、皆が納得するようなプロセスで決めてもらいたいと申し上げている」と改めて日商のスタンスを説明。新卒採用の早期化の中小企業への影響については、「中小の採用は大企業の採用活動が一段落してから本格化する」と述べ、「採用活動の早期化の影響はあまりない」との見方を示した。
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