日本商工会議所の小林健会頭は15日、首相官邸で行われた政労使の意見交換に出席し、「中小企業の『自発的かつ持続的な賃上げ』には生産性向上と取引適正化が不可欠」と述べ、「パートナーシップ構築宣言」の拡大と実効性向上に向け、政労使で連携して取り組みを進めていくべきとの考えを表明した。岸田文雄首相は、取引適正化について「政府としても、 政策を総動員して、環境整備に取り組む」と強調。「成長と分配の好循環の実現のための転換点がこの春の賃金交渉だ」との見方を示し、労使代表に協力を要請した。
8年ぶりとなった「政労使会議」には、日商の小林会頭のほか、使用者側から経団連の十倉雅和会長、全国中小企業団体中央会の森洋会長、全国商工会連合会の森義久会長、労働者側からは連合の芳野友子会長、政府からは岸田首相のほか、松野博一官房長官、後藤茂之新しい資本主義担当相、加藤勝信厚生労働相、西村康稔経済産業相らが出席。中小・小規模企業の賃上げに向けた取り組みについて意見交換を行った。
小林会頭は、「デフレ脱却には中小企業の賃上げが重要であり、できるだけ多くの中小企業が賃上げに取り組んでほしい」と述べた上で、「賃上げしたくてもできない事業者も多く、そうした企業が地域経済を支えている実態がある」と指摘。また、中小企業の「自発的かつ持続的な賃上げ」に向けては、「生産性向上と取引適正化が不可欠であり、パートナーシップ構築宣言の拡大と実効性向上に向け、政労使で連携して取り組みを進めていくべき」と述べた。
最低賃金については、「政府方針ありきではなく、法に定める三要素に基づき、公労使三者構成の最低賃金審議会で議論を尽くし、明確な根拠の下、納得感のある決定をすべき」と強調。税・社会保障制度上のいわゆる「年収の壁」については、早急な見直しを訴えた。
労働者側からは、連合の芳野会長が大手企業の賃上げの動きが中小企業へ波及することへの期待を表明。「消費者も、商品やサービスの価格上昇について、適正な対価として理解しなければならない」と述べた。
岸田首相は、「中小企業の賃上げには、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠である点について基本的に合意があった」と述べ、「政府としても、政策を総動員して、環境整備に取り組む」と強調。「労務費の転嫁の在り方について指 針をまとめる」との考えを示した。
また、「成長と分配の好循環の実現のための転換点がこの春の賃金交渉である」と強調し、労使代表に協力を要請。昨年、過去最高の引き上げ額となった最低賃金については、公労使三者構成の審議会において、明確な根拠の下で議論すること を要請した。
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